当サイトの本に関する記事はすべてネタバレに配慮しています。御気軽にお読みください。

屍人荘の殺人/今村昌弘 <あらすじ・感想・考察>こんな展開あり!?極限状況で起こるミステリー。

読書感想です。今回は今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」です。

今村昌弘さんのデビュー作で、数々のミステリランキングで1位に輝いた第27回鮎川哲也賞受賞作です。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:屍人荘の殺人
  • 作者 :今村昌弘
  • 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
  • 頁数 :382P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ミステリー小説が好き
  • 意外性のあるストーリーが好き
  • ユニークなキャラクターが好き

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
1
2
3
4
5
読み応え
1
2
3
4
5
過激表現
1
2
3
4
5

あらすじ

『神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通うもう一人の名探偵、剣崎比留子と共に曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、ペンション紫湛荘を訪れる。初日の夜、彼らは想像だになかった事態に見舞われ荘内に籠城を余儀なくされるが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。
たった一時間半で世界は一変した。

引用元:東京創元社

感想

極限状況のクローズドサークル

本作は「クローズドサークル」や「本格ミステリー」の要素を踏襲しながらも、驚くべき展開と独創的な設定を融合させています。

その巧妙さは驚きでした。

物語の舞台は、孤立したペンション。そこで起こる謎の連続殺人事件が、大学生の葉村譲や探偵志望の剣崎比留子を中心に解き明かされていきます。

しかし、物語が進むにつれ、予想を遥かに超える事態が明らかになります。この意外性こそが本作の最大の魅力だと感じます。

魅力的な登場人物

登場人物それぞれの個性も鮮やかに描かれており、物語の緊張感を引き立てています。

剣崎比留子の冷静な推理、葉村譲の素朴で親しみやすい視点、そして他の登場人物たちの行動や会話の細部に至るまで、作中で展開される「人間ドラマ」も心に残りました。

ミステリーの可能性を改めて感じる

先鋭的な試みと完成度の高さに驚かされました。

ミステリーというジャンルの可能性の広がりを実感するとともに、次作への期待が膨らみました。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
kindle unlimitedで読書生活をより楽しみませんか?対象の小説や漫画など、
200万冊以上が読み放題。
登録はこちらから↓

感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

こんな形でクローズドに?

クローズドサークル系のミステリーだとはわかっていたものの、まさかのファンタジー設定で驚きでした。

そういう状況の舞台だとわかったときは、その状況もゾンビの設定次第ではあるので、その設定が都合良く見えてしまったりしないのかと心配になりました。

ただ評価されている作品だけあって、きちんと練られていて感心しながら物語を楽しめました。

 
こよい
登場人物が多いなと思っていたら数人がさらっといっぺんに消えたので、シンプルになって読みやすくなりました。

気になる要素に気が散る

今作の大きな特徴はやはり舞台設定です。序盤は事件に巻き込まれるであろう学生たちとテロリストの二つの視点が描かれていました。

斑目機関など気になる固有名詞が登場したり、ペンション内にもテロリストに関わる要素が現れたりなど、どう二つの視点が交差するのかと気になりながら読み進めていきましたが、ゾンビ発生後はテロリスト側の視点は出てきませんでした。

テロリストの存在はクローズドサークルが作られる背景としての要素でしかなかったということになります。

私はテロリスト側の話がペンション内の事件に関わってくるのかと気にしながら読んでしまっていたので、読んだ後には、結局何だったんだという思いが残っていました。

ミステリーとしての驚きは…

ゾンビが殺人事件に絡んでしまうとゾンビの設定次第でトリックは如何様にでもなってしまうのでは?と思いながら読んでいましたが、個人的にはゾンビとしてイメージする特徴から大きく外れてはいなかったので違和感を感じるようなことはありませんでした。

印象的だったのは立浪に対する犯行で、二度殺すためにこの方法を取ったというのはこの設定ならでは思考で、狂気を感じられてゾクッとしました。

事件の真相としては、私は読んでいる途中で犯人や実現方法がわかったわけではなく、本格ミステリーらしい驚きはありました。

それと同時に無難な結果に落ち着いたなという印象でした。

本格ミステリーとエンタメを両立させていると言えますが、舞台が特異であるために、事件の真相にもインパクトのあるエンタメな展開を期待してしまった気持ちもあります。

続編に期待

気になる要素が残っていたり、葉村譲、剣崎比留子のキャラクターや2人のやり取りが好きだったので、この世界観がこの作品きりになってしまうのは惜しいです。

と思っていたら、世界観を同じくした続編があると知り、また剣崎比留子や斑目機関が関わってくるらしいのでほっとしました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/屍人荘の殺人

まとめ

以上、今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」の読書感想でした。

先鋭的な試みと完成度の高さに驚かされました。この物語を読むことで、ミステリーというジャンルの可能性の広がりを実感するとともに、今村昌弘さんの次作への期待が膨らみました。ミステリー好きにとって必読の一冊かと思います。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。