読書感想です。今回は皆川博子さんの「蝶」です。
皆川博子さんは直木賞をはじめ数々の賞を受賞しており、数々の作品を残している小説家さんです。私は初めて手に取ったのがこの作品になりました。(ちなみに私はkindleで読んでおり、単行本、文庫本は絶版らしいです。)
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。
作品情報
- 作品名:蝶
- 作者 :皆川博子
- 出版社:文藝春秋(文春文庫)
- 頁数 :221P
こんな人におすすめ
- 心理描写や人間の深層に興味がある
- 美しい日本語や文学的な表現を楽しみたい
- 暗い雰囲気や人間の闇を描いた物語が好き
特徴グラフ
※私個人の見方・感想です。
あらすじ
『インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて……戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。』
感想
戦中・戦後の日本を舞台にした短編集
本作は短編集です。戦中・戦後の日本を舞台に、人間の深層心理や社会の暗い部分を描き出した8篇で構成されています。
各作品には詩や俳句が引用され、それが物語の奥行きを深めています。
美しさと残酷さと儚さ
美しさと残酷さが交錯する物語は、読む者を深く引き込み、戦争という暴力によってゆがめられていく人々の姿を儚く描き出しています。
例えば、表題作「蝶」についてはインパール戦線から帰還した男が、妻とその情夫との奇妙な同居生活を送るというところから始まり、衝撃的な展開が続いていきます。
残酷ながらどこか儚さを感じる不思議な雰囲気に包まれています。
また「想ひ出すなよ」では、読書好きな少女が大人の世界に踏み込み、友人たちとの関係が微妙に変化していく様子が描かれています。
少女の小さな社会に張り巡らされる見えない悪意の糸が、息詰まるような緊張感を生み出しています。
解説が良い
正読みやすい部類ではなく、読み進めるだけでも少し難しいと感じる部分もあります。
正直に言えば、自分の中にイマイチ落とし込めないまま読み終えてしまうものもありました。
そんな中で、私は文春文庫版を読みましたが、齋藤愼爾さんの解説が各作品をよく噛み砕いてくれて、解釈を助けてくれました。
他の読者の感想
こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。
まとめ
以上、皆川博子さんの「蝶」の読書感想でした。
文学的で読み解くのが難しいと感じる部分もありますが、戦時下の人間模様を通じて、人間の本質や社会の闇を浮き彫りにするその洞察と文章は、強く印象に残りました。皆川博子さんの他の作品も読んでみたいという気持ちになりました。
未読の方は是非手に取ってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。