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レーエンデ国物語 喝采か沈黙か/多崎礼 -感想- シリーズ第3弾。英雄の軌跡。芸術家兄弟が世界の変革に挑む

読書感想です。今回は多崎礼さんの「レーエンデ国物語 喝采か沈黙か」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:レーエンデ国物語 喝采か沈黙か
  • 作者 :多崎礼
  • 出版社:講談社
  • 頁数 :352P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 王道のファンタジー小説を読みたい
  • 悲壮感と美しさを兼ね備えた世界観を体感したい
  • シリーズの前作までを既に読んだ
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
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あらすじ

『☆☆☆
運命の幕が上がる。
たった一曲が世界を変えた。
灯火(はじまり)は、愛を知らない双子だった。
☆☆☆

ルミニエル座の俳優アーロウには双子の兄がいた。
天才として名高い兄・リーアンに、特権階級の演出家から戯曲執筆依頼が届く。

選んだ題材は、隠されたレーエンデの英雄。
彼の真実を知るため、二人は旅に出る。

果てまで延びる鉄道、焼きはらわれた森林、差別に慣れた人々。
母に捨てられた双子が愛を見つけるとき、世界は動く。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

リーズ第3弾
レーエンデ国物語シリーズ第3弾です。前作よりまた時は進み、またレーエンデを舞台に人間と国の物語が繰り広げられます。

前作との繋がりが強い
第1弾を物語の原点として、第2弾は革命の始まり。この第3弾は1→2の流れから見ると前作との繋がりを強く感じます。簡単に言えば前作出てきた名称がよく出てきます。なので単独で成り立つ物語ではなく、前作を読んですぐに今作を読むことをお勧めします。

兄弟の物語
今作はシリーズ中ではページ数が少なく、物語の作りとしても比較的シンプルです。主役はレーエンデ人の兄弟で、その周囲で物語は進むので名前や地名などで混乱することはありません。

今作も革命の話ではありますが、第2弾の血で血を洗うような物語とはまた色が異なります。芸術が重要な要素として描かれていきます。歴史を紡ぐシリーズとして世界観に緻密さを与える物語であるように思います。

短いからといってただ空白を埋めるだけの内容が薄い物語ということは全くありません。今作の特徴は人間を中心に描いていることです。その点で私は物語としてはシリーズ中最も面白く感じましたし、シリーズの先を期待させられるような重要性、可能性を秘めた作品であったように思います。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

芸術が世界を変える
力で勢力図を変えるのではなく、芸術で人の心を揺さぶろうというこれまでと異なった形での革命へのアプローチは私は好きでした。そういう形だからこそ人の思いやその繋がりが感じられて、ただ歴史上の出来事というだけでなく物語に感情移入できたように思います。

テッサの軌跡を辿る
そのように話が進んだことでワクワクしましたし、前作の出来事がねじ曲がって伝わっているという状況、読者としてそこに気付きながら読み進める、そこまでの年月や時代背景が気になる面白い構成でした。ルーチェが守った娼館からその物語が始まるというのも感慨深いです。

アーロウとリーアン
アーロウは凡人と言われつつも凡人の中の最上級のように見えます。そして最終的には演出家としてリーアンも言っていた通り一流であったと思われ、アーロウとリーアン、凡人と天才という構成のように描かれつつもそうではない感じは少し違和感がありました。

物語の結末である2人の入れ替わりはまたレーエンデ国物語らしい悲壮感のある劇的な展開でした。以下のような文章がありましたが、犠牲法で処されたのはリーアン、生き残って『月と太陽』を演出したのがアーロウ(途中途中で描かれた『月と太陽』上演場面でリーアンとされていたのは入れ替わったアーロウ)という理解になりますよね?

『はたしてそれはリーアン・ランベールであったのか。 それともアーロウ・ランベールだったのか。』

『月と太陽』上演場面でアーロウが犠牲法の生贄になったと語られたところでは衝撃とその後の混乱がありました。2人の入れ替わりの伏線になっていたことに後々気付きます。

兄弟以外の登場人物で印象的だったのはミラベル・ロランスです。私もアーロウと同様の印象を彼女に持っていたために、「救済院に多額の寄付をしてくださる天使さま」であるとわかったシーンではアーロウと同じように彼女に顔向けできないような気持ちになり、またミラベル・ロランスへの好感が振り切れました。

前作との繋がりを少し解説・考察
繋がりのあった人物名などについて主な部分に触れてみたいと思います。

マウロ
前作ではテッサを敬愛し、テッサの処刑時にパンを持ってきて印象的なやり取りをした少年の名前でした。今作で登場したマウロはその血筋を引き継いだと思われるパン屋さんです。テッサの出来事は語り継がれているようでしたが、その事は自分を守るためには隠さなければならない事だとする行動を取ります。時の流れを感じさせるような人物でした。

リカルド
前作ではレイル壊滅時の生き残りで、レイル崩壊の原因であるとテッサを責めるも、司祭長一家の墓を立てるテッサを見て理解を示すという人物でした。今作ではその血筋と思われるリカルドは英雄時代のテッサの物語を忠実と思われる形で語る人物です。テッサを悪者としなかった、長年しっかり語り継がれたという点。前作のリカルドとの場面が意味深に見えてきます。

イザーク、エルウィン
アーロウによる『「ウル族の伝承を集めた本がある。イザーク・ドゥ・エルウィンっていう、ウル族の作家が書いた本だ。」』という発言。
知られざる者として登場したエルウィンの末裔。
竜の首の設計図。
今後に繋がる伏線としてちらっと現れた印象です。

『春陽亭』と、『春光亭』
ここは作中でも語られたとおりですが、そのように地続きになっていることが明確になるとなんだか嬉しい気持ちになりますね。

『娼館の主人は『ミラ』、座長は『ペネロペ』、一番人気の女優は『シーラ』だ。』

不朽の名作『月と太陽』
今もなお歌い継がれる名曲『レーエンデに自由を』
前作のタイトル、作中に繰り返し登場した言葉。単純かもしれませんがワクワクしちゃいますね。

3行でネタバレ(開く際は要注意!!!)

続きを読む ※ネタバレ注意
レーエンデ人の双子兄弟、天才劇作家リーアンと演出家アーロウが英雄テッサの物語を脚本化するため、その軌跡を追う
リーアンはテッサの物語である名作劇『月と太陽』と名曲『レーエンデに自由を』を完成させるも、アーロウが帝国により処刑されることになる
リーアンはアーロウと入れ替わり処刑され、アーロウはリーアンになりきり『月と太陽』を演出、念願の舞台で披露することを果たす

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/レーエンデ国物語 喝采か沈黙か

まとめ

以上、多崎礼さんの「レーエンデ国物語 喝采か沈黙か」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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