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宙ごはん/町田そのこ -感想- おいしいごはんは家庭を救う

読書感想です。今回は町田そのこさんの「宙ごはん」です。
2023年本屋大賞ノミネート作品です。記事公開時点ではKindle Unlimitedの読み放題対象になっています。
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記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:宙ごはん
  • 作者 :町田そのこ
  • 出版社:小学館
  • 頁数 :369P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • “家族”の在り方について考えさせられる物語が読みたい
  • ただ穏やかに進むのではなく、辛さもありながら温かい気持ちになれる物語が読みたい
  • 本屋大賞ノミネートしている有名作品を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

この物語は、あなたの人生を支えてくれる
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。』

引用元:小学館

感想

「宙ごはん」というタイトルから、温かいごはんと温かいお話が見られる穏やかな物語なのかな、なんて思ったら想像と違いすぎて驚いてしまうかもしれません。”家族”について重たいテーマを持って密度の濃い物語が描かれます。頁数もそれなりにありじっくりと読むことになる作品かなと思います。

歪な形を持つ家庭にいる女の子である宙の目線で物語は進んでいきます。母親の花野さんが特殊な存在で、まともに自分に向き合ってくれません。そんな母親との過ごし方に日々悩み、寂しさを抱えます。その生活の様子、子どもが虐げられる話にはとても胸が苦しくなります

そんな母親と子どもの間を取り持ってくれる男性の佐伯が現れます。この作品の数少ない救いとも言える温かい存在です。彼が作るごはんが人の心を解きほぐしてくれます。おいしいごはんにはお腹を満たす以上に多くのことを与えてくれる魔法のような力があるのかもしれません。そして温かいごはんを一緒に食べるということが家族にとって大切なことであるということを改めて感じます。この物語の要所では彼とおいしいごはんが登場します。

一見、悪い母親によるネグレクト、としか見えない序盤ですが、母親も複雑な事情を抱えていることが少しずつ明らかになっていきます。また他にも様々な問題を抱える家庭が登場し、親子ともにどうあるべきかを考え成長していきます。

子どもだけではなく親である大人の視点も描かれているのが大きな特徴かと思います。親に振り回される子どものお話ではあるのですが細かな背景を知っていくにつれて見え方が変わり、子どもと向き合えないのはただの怠慢、とは言い切れない場合もあると知ります。一筋縄ではいかない難しい問題です。そんな中で自分がどうあるべきかを考えるヒントがこの物語の中には含まれていたように思います。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

はじめに少しネガティブな印象を書きますが、物語最後の第五話は良いと思えませんでした。重たい展開はお腹いっぱい、詰め込み過ぎで説教くさくなってきたという感じを受けたこと、また、少し毛色が違う新たな問題がテーマになりますがそのためにやっちゃんを死なせる必要はあったんだろうかとどうしても後味が悪い印象になってしまったこと。これらが私には目に付きました。

花野さんと宙の変化の集大成であるというのはわかります。また花野さんと宙の過去が明らかになる物語の結末としてインパクトのある展開だったのは間違いないです。結末としては前向きに終わった形ですが前向きになりきれない私がいます。現実ってそんなもの、と思わせたかったわけではないと思うのですが…

少しといって長々ネガティブなことを書いてしまいましたが、そこまではとても面白く読んでいました。特に、人が家庭から受ける影響とそれへの向き合い方については考えさせられました。

大人の身勝手によって子どもが振り回される、という背景にはその大人がどう生きてきたかということも関わっています。言われてみれば当然のことですが普段あまり意識することではないです。一見ただの加害者のように見えても、よく知ると違って見えるかもしれません。花野さんの行動は最初から最後まで多少改善されても大きくは変わらず宙との関わりが足りていないようには見えますが、印象が序盤と終盤でガラッとと変わりますよね。花野さんも結局家庭の犠牲者ではあって、宙に対する行動も直接行っているのは花野さんであっても、ただ花野さんが悪いというようには見えなくなりました。花野さんの見え方の変化にはハッとさせられます。よく知りもしないで物事を判断しようとしていた自分がいました

宙はやっちゃんらの支えもありながら上手に花野さんと向き合っていました。相手のことを知ってそれに適応していく。大人でも難しいことではないでしょうか。少なくとも私が子どもの頃はここまで考えられなかったと思います。マリーちゃんや鉄太との関わりにおいても宙は賢すぎる節があり、子どもの成長過程という意味では少し非現実的なように感じなくもないですが感心することが多くありました。特に印象的だったのは鉄太との付き合いに対して「別れるってことまで、経験してみたかった」と言った場面で、さすがに達観しすぎですが、早いうちに身をもって知った方がいいことでもあるのかもと感心してしまいました。

花野さんと宙の家庭を救ったのは間違いなくやっちゃんですが(命を救ったという意味では風海さんの存在が最も大きいですが)、やっちゃんは花野さんの背景をすでに知っていたから救うことができたように思います。普段から「見た目で判断せずにまずはもっと知ること」が出来れば良いですが現実ではなかなか難しいことです。ただ、この物語からそのことを改めて知ることができたことが成長の一歩になったかもしれません。

やっぱりやっちゃんには花野さんと宙と、智美さんと家族と、物語の最後まで生きて過ごしてほしかったですね。やっちゃんの男気とおいしそうな料理にはほっとさせてくれる温かさを感じました。やっちゃんへの親しみを宙と共有できていたように思います。小説を読むにあたって基本的には別れなども物語の一部であるとして登場人物に対してこうあってほしかったと思うことはありませんが、今作の展開に納得しきれないのはいくつかの意味で報われなさすぎるからかもしれません。そう思えるほど魅力的な登場人物であったということでもありますね。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/宙ごはん

まとめ

以上、町田そのこさんの「宙ごはん」の読書感想でした。
記事公開時点ではKindle Unlimitedの読み放題対象になっています。未読の方は是非手に取ってみてください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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