あらすじ・読書感想・考察を記します。今回は中田永一さんの「百瀬、こっちを向いて。」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。
作品情報
- 作品名:百瀬、こっちを向いて。
- 作者 :中田永一
- 出版社:祥伝社(祥伝社文庫)
- 頁数 :280P
こんな人におすすめ
青春の“ほろ苦さ”が好き
学生時代の思い出に少し胸が痛くなるような、そんな感情をもう一度感じたい人におすすめです。繊細な人間関係が描かれる物語が好き
はっきり言葉にはされない“すれ違い”や“気づかれない気持ち”。じんわり感情が動くような作品に惹かれる人におすすめです。短編集で、色々なテイストを少しずつ楽しみたい
通勤通学の合間に1話ずつ読める手軽さも魅力です。
特徴グラフ
※私個人の見方・感想です。
あらすじ
『「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは―。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。
「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった……!」
恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。』
引用元: 祥伝社
感想
表題作「百瀬、こっちを向いて。」を含む短編集です。甘酸っぱくて、少し切ない青春の一瞬を切り取った全4編か収録されています。
・百瀬、こっちを向いて。
・なみうちぎわ
・キャベツ畑に彼の声
・小梅が通る
まず、一言で言うなら「なんてまぶしくて、せつない青春」という印象でした。表題作の「百瀬、こっちを向いて。」はとくに、男子高校生の“思い出の中の恋”を丁寧に描いていて、自分の若い頃を思い出すような感じがありました。
個人的に好きだったのは表題作の「百瀬、こっちを向いて。」です。
「恋人のふりをする」という一見軽い設定が、主人公と百瀬の内面を深く掘り下げていくための装置になっています。百瀬が演技の中で少しずつ本音を見せていく様子、それに気づきながらも「これは嘘の関係なんだ」と自分に言い聞かせる“僕”の葛藤がリアルでした。
終盤には、百瀬もまた、誰にも言えない想いを抱えていて、演技を続けることで自分の気持ちを守っていたんだとわかった瞬間、彼女の強がりがいっそう切なく見えました。
また、“僕”が大人になってからこの出来事を振り返るという構成も秀逸です。一度きりの、戻ることのできない時間。その「眩しさと痛み」が混じった記憶を、やさしく見つめるような語り口があたたかく、切ない余韻がありました。
他の読者の感想
こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。
まとめ
以上、中田永一さんの「百瀬、こっちを向いて。」の読書感想でした。
青春時代のさまざまな感情や出来事を描いた短編集で、どの作品も登場人物の心情が細やかに描かれており、誰にでもある“あの頃”の記憶を優しく掘り起こしてくれるような青春小説でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。