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氷菓/米澤穂信 -感想- 「古典部」シリーズ第1作目。アニメの原作だと侮らないでください。

読書感想です。今回は米澤穂信さんの「氷菓」です。
アニメ化等されている「古典部」シリーズの第1作目で、米澤穂信さんはこの作品で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビューしています。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:氷菓
  • 作者 :米澤穂信
  • 出版社:KADOKAWA(角川文庫)
  • 頁数 :224P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 人が死なない推理小説を読みたい
  • さらっと読める小説を読みたい
  • アニメ等メディア化されている有名シリーズを読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
1
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あらすじ

『何事にも積極的に関わらないことをモットーとする奉太郎は、高校入学と同時に、姉の命令で古典部に入部させられる。
さらに、そこで出会った好奇心少女・えるの一言で、彼女の伯父が関わったという三十三年前の事件の真相を推理することになり――。』

引用元:カドカワストア

感想

学園推理小説
鉄板の設定とも言える学園物でしかも推理小説。この時点で少しやり過ぎに見えてしまうのは今の時代だからでしょうか。しかし学生が殺人事件を解決するみたいなことはなく、もっと身近な謎を解き明かすという物語となっています。

こう書くと推理小説としては内容が浅いのではと思われてしまう気がしますが、全くそんなことがなく内容がきちんと伴っていることが今作が評価されている所以であろうと思います。この設定だからこそできる謎解きになるほどなぁと感心させられます。

個性的な登場人物たち
主要な登場人物の名前は折木奉太郎、千反田える、福部里志、伊原摩耶花。それだけでもいかにも小説やアニメのキャラクターという印象ですが、それぞれが持つ特徴もまたいかにもという感じです。例えば折木奉太郎は無気力系男子、千反田えるは好奇心旺盛お嬢様など。

さらっと楽しめる
ページ数はそれほど多くなく、文章も軽やかでさらっと読み進めることができます。登場人物の複雑な相関みたいなものもありません。推理小説として頭を使いながら読むことはせずにただ楽しく読むこともできそうです。

興味を引く謎と印象深い結末
ここまで表面のことを書いてみてかなりライトな印象になってしまった気がしますが、ここがこの小説の魅力の核だと思っています。

物語の本筋となる謎の仕掛け方が上手で先が知りたくなってしまう。そして待ち受ける真相は作品全体の空気感を覆すような印象深い内容。舞台設定やキャラクターから見える表面的な印象とは異なり、きちんと推理小説として密度の濃い読書体験ができる作品です。私はその真相に目頭が熱くなりました。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

ライトなミステリー
何故か閉まっていた教室のドアや図書館の本の動向など、序盤は日常で起きていそうな謎を解いていくというところは謎解きではあるもののそれぞれのキャラクターの紹介パートなのかなという軽さでした。この感じのまま終わったらどうしようと思ったくらいでしたが、千反田えるが何かを仄めかしだしてからは本筋にぐっと引き込まれることになりました。

本筋である「千反田えるの叔父は幼きえるに何を言ったのか」というのは一見小さな謎に見えますが、「氷菓の意味」「千反田えるはそれを聞いて泣いた」と小説のタイトルの意味、それも裏に何かが確実に隠れているというものを追うということになり、この小説を読んでいる以上気にせざるを得ない謎となっているように思いました。真相がタイトルに繋がるというのはありがちなもののワクワクな展開でまんまとハマっていきました。

登場人物たちの痛さ
リアリティのある登場人物という感じではなくあくまで創作上のキャラクターというイメージが強い主要の4人たちでした。特に奉太郎はアニメでよく見るような無気力系男子という印象でしたが、刊行当時だと異なって見えたのでしょうか?千反田えるもありがちな設定に思えます。が、魅力的なのには間違いないですね。漫画やアニメも好きという方はすんなり受け入れられるんだと思います。

奉太郎のキャラクターとして「お、いいな」と思えたシーンがありました。周りの皆と同じように明るい色をした青春を送りたいという本音をさらけ出せる奉太郎はただの無気力系男子ではなかったと少し好きになりました。

「ホータローは、薔薇色が羨ましかったのかい」
俺は何も考えずに答えていた。
「かもな」

『氷菓』
文集のタイトルに込められた意味は関谷純の声にならない叫びだったのですね。自ら英雄になったわけではなく、させられた。カンヤ祭として祀られる皮肉。関谷純がその後どう過ごしたのかも明らかにならず、行方不明で死んだ扱いになるというのも、下手にこの事実を和らげるようなことがなく徹底した結末で私は好みでした。(不幸が好みというわけではなくて、話が一つの方向に徹底して向いているという潔さが好みという意味です。)

おまけ
英題の「you can’t escape」は無接触無関心ではいられない折木奉太郎のことや、最初の千反田えるの部室閉じこめられ事件、最後の関谷純の境遇に掛かってるんだと思いましたが、構成含めおしゃれですね。ちなみに28版以降の英題は「The niece of time」になっており、そちらはジョセフィン・テイの推理小説『The Daughter of Time』が由来になっているそうです。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/氷菓

まとめ

以上、米澤穂信さんの「氷菓」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。