当サイトの本に関する記事はすべてネタバレに配慮しています。御気軽にお読みください。

百年の孤独/ガブリエル・ガルシア=マルケス -感想- 臆せずに読んでみて。世界的ベストセラー。20世紀文学の傑作。

読書感想です。今回はガブリエル・ガルシア=マルケスさんの「百年の孤独」です。
新潮文庫から改訂新装版が2024年6月に発売されて改めて注目を浴びた作品です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:百年の孤独
  • 作者 :ガブリエル・ガルシア=マルケス/著 、鼓直/訳
  • 出版社:新潮社(新潮文庫)
  • 頁数 :672P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 重厚な文学を体感したい
  • マジックリアリズムを代表する小説が読みたい
  • ノーベル文学賞受賞作家による世界的ベストセラーとなった小説を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
1
2
3
4
5
読み応え
1
2
3
4
5
過激表現
1
2
3
4
5

あらすじ

『蜃気楼の村マコンドを開墾しながら、愛なき世界を生きる孤独な一族、その百年の物語。錬金術に魅了される家長。いとこでもある妻とその子供たち。そしてどこからか到来する文明の印……。目も眩むような不思議な出来事が延々と続くが、予言者が羊皮紙に書き残した謎が解読された時、一族の波乱に満ちた歴史は劇的な最後を迎えるのだった。世界的ベストセラーとなった20世紀文学屈指の傑作。』

引用元:新潮社

感想

濃密
ざっくり言えばあらすじにある通りとある村、とある一族の百年の物語で間違いないのですが、百年かけた大きな流れというより小さな現実の積み重ねが結果として百年に至るというイメージです。これでもかというくらい執拗に物事を細かく描いてあり、時間の感覚が狂うような濃密な読書体験が果てしなく続いていきました。読むのにえらい時間かかりました…

小説だからこその体験
小説ならではの体験ってなんだろうと思うことが時々あります。例えば映画化やアニメ化されたりする小説もありふれていてビジュアル的にはその方がわかりやすい。一方で小説の方が目に見えない部分まで言葉で表現されその点の情報量は多くなる。そんなイメージではありました。

「百年の孤独」を読んで体験できることは小説ならではの体験なんだろうと思います。ただそれは上記のようなことではなく、文章によって作り出されたもう一つの現実を覗き見ているような、迫ってくるようなリアリティを感じました。小説はこんなこともできるのかと今更ながら気付かされました。

マジックリアリズム
マジック(魔術的)リアリズムとは現実と非現実を融合した表現技法のことです。この物語には上に書いたような重厚な現実の中に、自然と非現実が入り混じっています。芸術性を感じる、と言われてみればそうですが、シンプルに物語を面白くしているこの作品の魅力的なポイントでした。

ちなみにシュルレアリスム(超現実主義)と混同しそうですが、それぞれ全く異なる意味だそうです。この作品をきっかけにそんなことも調べてみたり。

臆せずまずは読んでみては?
なんだか難解そうだし、本の分厚さや巻頭のブエンディア家家系図を見ただけで少し臆してしまう。私は読み始めはそのような印象でした。ただ、読み始めると内容は頭に入ってくるし物語として単純に面白い。特に中盤以降は一気に読みたくなるほど引き込まれていました。とはいえ癖があるのは否めません。

私が読んだ感触から、読もうか迷っている方の背中を押せそうなポイントをいくつか書いてみます。気持ちを軽くして読むきっかけになればと思います。
・登場人物の複雑さは意外と感じない。同じ名前が何人か出てくるという特徴があるが、呼び方が分かれるためごっちゃにはならない。
・わからない言葉は読み飛ばしても問題ない。私は読んでいる途中では注釈は見なかった。
・最序盤は読み進めることに不安を感じるが読み進めるごとに面白くなる。そして読み進めるごとに序盤への印象が変わる面白さもある。
・章立てはされていないが明確な節がいくつかあって、読むリズムを整えやすい。
読み解き支援キット」がよくまとまっている。(私は読んでいる中でこれを見ることを必要としませんでしたが、読んだ後で振り返るのにとても役立ちました。)※ここから入手可能。読み解き支援キット

上記からわかるように私は全てを理解して読み進めていないので細かい部分で見落としがあるだろうなとは思っています。しかし話の本筋、魅力の大部分は堪能できた実感があります。とにかくまず読んでほしい。時間を費やす価値がある、と私は思いました。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
kindle unlimitedで読書生活をより楽しみませんか?対象の小説や漫画など、
200万冊以上が読み放題。
登録はこちらから↓
使用感など書いた記事もありますので読んでみてください↓↓↓
kindle unlimitedを使った感想を率直に。おすすめできる?【レビュー・評価】

感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

作品全体に対して感じたことはネタバレなしに書いたことでほとんどです。細かい場面に触れ出すとキリがないですが、私が特に印象的だった場面を並べてみます。

不眠症という名の物忘れ症
この辺りからぐっと物語として面白くなった気がします。マコンドが病気に冒されていく様子が悲劇ながらちょっと笑えてしまい不思議な世界観を表す印象的な出来事でした。

栗の木に縛られ続ける最初の人
ホセ・アルカディオ・ブエンディアは一族の元祖なだけありユニークなキャラクターでした。未知への異常な探究心が勇ましく見えたり滑稽に見えたり。そんな彼が途中から雨風も関係なく栗の木に縛られ続け、物語的にもそのままほったらかしになるのには笑えました。ただ物語の根本には彼がいるというのを忘れることはありませんでした。不思議と印象に残る人物でした。

小町娘のレメディオスの昇天
これには驚きました。唐突に起きた非現実的な出来事でありながら何故か現実として画が容易に思い浮かべられるようでもある不思議で印象的な場面でした。

ウルスラ
彼女に触れないわけにはいかないですね。物語に最も長く登場したかと思いますが、あそこに居続けられる強靭な精神力に感服します。そこにいるのが彼女でなければもっと早く一族は滅びていたことでしょう。そんな彼女が爆発する以下の場面が印象的でした。

『ウルスラは、いっそこのまま墓にはいって土をかぶったほうがよくはないか、と自分に問いかけ、さらに、これほどの悲しみや苦しみをなめさせるとは、まさか人間が鉄でできていると本気で信じているのではあるまいと、恐れげもなく上に迫りたい気持ちにもなった。こうした疑問をくり返しながら混乱した頭のなかをひっ掻き回しているうちに、彼女はよそ者をまねて思いっきりはめをはずし、一瞬でもいい、最後の抵抗をこころみたいという激しい欲望に取り憑かれた。~「ちくしょう!」思わず大きな声が出ていた。』

アウレリャノ・ブエンディア大佐の死
何気ない繰り返しの一日のようにその最期の日が描かれる場面は独特な雰囲気でした。そこまでの激動の時代があったが故にその何気ない生活がただそれとして見えるだけでなく寂しさを漂わせていてぐっときました。

孤独とは?
一族の周りにはいつも人が溢れていて、孤独ってなんだ?と考えながら読んでいました。物語の中で語られたのは「愛の能力の欠如」。ここが肝であるはずですがどうも納得のいく解釈が出来ておらず、他の読者の意見を聞いてみたいところです。

他にも
ここに挙がっていない話の中にもたくさん印象的な場面はありましたが、やはりキリがありませんね。村と一族の百年をこれほどの密度で作り出したということ自体が非現実的で、むしろこの物語は現実にあったことだったのではと本気で思うほど濃密でした。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/百年の孤独

まとめ

以上、ガブリエル・ガルシア=マルケスさんの「百年の孤独」の読書感想でした。

池澤夏樹さん監修の「読み解き支援キット」というものがあります。私は読んだ後に見ましたが、登場人物がわかりやすいように分類されており、話全体の流れが追えてざっと振り返るのにはとても役立ちました。以下のリンクから入手可能です。
読み解き支援キット

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。