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夜のピクニック/恩田陸 -感想- 歩くだけという美しい青春

読書感想です。今回は恩田陸さんの「夜のピクニック」です。
第2回本屋大賞受賞作。青春を感じる小説として私の中では最上位に位置する作品です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:夜のピクニック
  • 作者 :恩田陸
  • 出版社:新潮社(新潮文庫)
  • 頁数 :464P
  • 書影出典:恩田陸『夜のピクニック』(新潮文庫刊)

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 学生時代の青春を味わいたい
  • 暴力などない平和な物語を読みたい
  • 清々しい読後感を感じたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
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あらすじ

『高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。』引用元:新潮社

感想

青春時代を懐かしく思うというより、今まさに青春を体感した、という感覚になりました。

全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという「歩行祭」が舞台となる青春物語。ただ歩くだけのイベントとはいえ、”夜通し”、”学校の友達たちと一緒に”、という非日常感にワクワクしますよね。

恋愛要素は若干ありますがそれが中心ではありません。あくまで学生の青春という内容なところが私は好みです。登場する学生たちがみんな良い子なんです。その子たちの他愛ない会話や行動に、学生時代の良い部分が凝縮されているように思います。歩行祭が進むにつれて経ていく山あり谷ありの景色の変化、日の入り真夜中夜明けという時間経過、学生たちに起こる変化。移り行く景色がとても美しく、またそれに負けないほど学生たちの青春の美しさがあります。

貴子の小さな賭けとは、学生たちの関係はどう展開するのか、先が気になる要素も散りばめられており読む手が止まらなくなります。

終盤の展開には幸福感に包まれて清々しい読後感でした。もっと浸っていたいような寂しさもあり、これが青春だ、とノスタルジックな気持ちになりました。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

融と貴子の関係がなかなか特殊で想像しにくさはありましたが、心情がわかりやすく2人とも純粋に良い子だったので、いがみあったまま終わってほしくないと思えました。当人になったかのように、2人が不意に近付く場面ではドギマギした気持ちになったり、会話を交わす場面では緊張したりしました。だからこそ結末にはとてもホッとしたのと幸福感に満たされました。

高見光一郎がいいキャラクターでしたね。ああいうおちゃらけキャラってどこにもいるよなと思いながら、気が利いてちょうどよく鈍感で純粋で、おちゃらけキャラ界でも屈指の有能さでした。終盤、内堀さんに融が取られかけたときに彼が登場した時の「きたー!」という高揚感がたまりませんでした。

そのあとにすっと貴子と融が2人になる、という流れも美しかったですね。空気感の変化がなんとも心地よい。

主要な登場人物がみんなちょっと達観しているというか大人で賢すぎるなとは思いました。例えば戸田忍は終盤にもっと融とぶつかり合ってほしいと思うくらいでした。表面上だとしても受け入れるの早すぎる気がします。そして遊佐美和子は完璧すぎる。対比で内堀さんがみじめに見えてしまいますが、少なくとも私は学生時代は内堀さんくらい学生なりの実直さで生きていたような気がします。なんとなく自分の学生時代を思い出しかけて恥ずかしくなり、思い出すのをやめました。

歩行祭の終わりは新たな始まりでもあるという終え方で、その後のみんなの関係がどうなるのかなっていう想像したくなります。みんなそのまま良い関係であってほしいですね。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/夜のピクニック

まとめ

以上、恩田陸さんの「夜のピクニック」の読書感想でした。
青春っていいですね。また読みたいと思える作品です。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。