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夢・出逢い・魔性/森博嗣 <あらすじ・感想・考察>Vシリーズ第4弾。思わぬ形で騙される。

読書感想です。今回は森博嗣さんの「夢・出逢い・魔性」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:夢・出逢い・魔性
  • 作者 :森博嗣
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :432P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • Vシリーズ前作を読んだ
  • ミステリー小説が好き
  • 哲学的な思考をすることが好き

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
1
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4
5
読み応え
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5
過激表現
1
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4
5

あらすじ

『夢の中の女に殺される
TV局内の殺人!

20年前に死んだ恋人の夢に怯えていたN放送プロデューサが殺害された。犯行時響いた炸裂音は1つ、だが遺体には2つの弾痕。番組出演のためテレビ局にいた小鳥遊練無(たかなしねりな)は、事件の核心に位置するアイドルの少女と行方不明に……。
繊細な心の揺らぎと、瀬在丸紅子(せざいまるべにこ)の論理的な推理が際立つ、Vシリーズ第4作!

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

Vシリーズ第4弾

Vシリーズの特徴であるスタイリッシュで知的なミステリーの魅力が存分に詰まった作品です。

シリーズものの続編ですので、前作を読んでいた方がキャラクターのことを知れているため楽しめるかと思いますが、物語としては単品でも成立している作品です。

独特なタイトルが示すように、多層的な意味を持つ作品です。

これまでの作品と同様に登場人物たちの魅力的な会話や個性的なキャラクター描写が際立っています。

瀬在丸紅子の論理的な推理が物語を引き締め、読者を引き込む要素となっています。

トリプルミーニング

タイトルは以下のように読むことができます。

また物語の内容と巧妙にリンクしているのが驚きです。タイトルから先に考えているんでしょうか。

〇夢・出逢い・魔性
〇You May Die in My Show
〇夢で逢いましょう

人間の暗いところ

一方で、事件のトリックや動機に関しては、異常性を感じさせる描写があり、人間の暗い部分を垣間見ることになります。

森博嗣さんの作品特有の、人間の複雑な内面の描写が今作も際立っています。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

WHYがポイント

犯人については物語の中盤でタクシーの運転手らしいということは見えていましたし、手段についても事件の背景として場当たり的なところがあり緻密に計画されたようなものではないので、あまり驚きという感じではありませんでした。

これは物語の構成としてそのように作られているものであって、この事件に関するポイントは動機かと思います。

これまでにない異常性を持つ犯人で、思想に共感できる部分は皆無でした。

究極の共感をするとその人に成り代わってしまうのでしょうか。

見知った他人の犬が事故に遭ったことを知ったことを発端として、そこまで行き着くのは怖いです。

自分を捨ててまで人のことを考えられるのは一定のラインまでは良い人とされるのかもしれませんが、その延長線上にこれがあるとすると表裏一体の危うさを感じます。

事件の真相とは別にある衝撃的な事実

今作の騙されポイントは稲沢の性別です。

私はまったく考えもしていなかったので、最後の紅子の台詞で真正面から衝撃を受けました。

 
こよい
私の謎解きの弱さはミステリーを楽しむのに向いているなぁと改めて自覚しました

どうして男性だと勘違いしていたのかを考えてみると、保呂草が三人称視点で書いているという作りがまたキーになっていますね。

・保呂草が探偵として稲沢を辻谷へ紹介したときの辻谷の台詞

「いいじゃん。その彼でいこう」

・保呂草と稲沢が知り合った経緯の話の中で

保呂草が海外にいるとき、日本から観光旅行でやってきた稲沢と妙な経緯で同じホテルになった。そのあと、1週間ほどずっと彼と一緒だった。

・辻谷が稲沢と会った際の様子

辻谷は稲沢を見て、ちょっと驚いた様子だった。おそらく、彼の抱いていたイメージからかけ離れていたためだろう。もう少し年配で頑丈なタイプ、渋いベテラン探偵を想像していたのに違いない。 

上記の2点目はトリッキーですね。

自然と読むなら”彼”が指しているのは稲沢になりますが、”彼”が保呂草を指しているとしても文章としては成り立っています。

今作は小鳥遊が男性であることを隠していることが終始注目されていたことなどもあり、性別誤認のヒントは散りばめられていました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/夢・出逢い・魔性

まとめ

以上、森博嗣さんの「夢・出逢い・魔性」の読書感想でした。

巧妙なタイトルの多義性、魅力的なキャラクター、そして深い心理描写が融合した作品です。Vシリーズのファンのみならず、ミステリーファンにもおすすめできる一冊です。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。