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姑獲鳥の夏/京極夏彦 <あらすじ・感想・考察> 幻想と現実の狭間

読書感想です。今回は京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:姑獲鳥の夏
  • 作者 :京極夏彦
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :630P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 知的好奇心が旺盛
  • 幻想的・怪奇的な物語が好き
  • 京極夏彦作品に挑戦してみたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『この世には不思議なことなど何もないのだよ――古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津(えのきづ)らの推理を超え噂は意外な結末へ。

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

百鬼夜行シリーズの第一作

京極夏彦さんのデビュー作であり、百鬼夜行シリーズの第一作です。

京極夏彦さんの世界に初めて触れる人にも最適ですね。

圧倒的なボリュームと独特の世界観が大きな特徴です。

独特な世界観のミステリー

物語は昭和27年の夏、文士の関口巽が、二十箇月もの間子供を身籠ったままの女性と、密室から煙のように消えた彼女の夫にまつわる奇怪な噂を耳にするところから始まります。

この謎を解き明かすため、関口は古本屋であり憑物落としの陰陽師でもある京極堂こと中禅寺秋彦の助力を仰ぎます。

圧巻の構成

本作の魅力の一つは、京極堂が披露する膨大な知識とうんちくです。

量子力学や民俗学など多岐にわたる話題が登場し、一見すると脱線のように思えるこれらの議論も事件の真相解明に深く関与しており、読者を唸らせる構成となっています。

人間の業や信念がもたらす悲劇が描かれ、単なるミステリーを超えた人間ドラマとしての側面も持ち合わせています。

躊躇いたくなるボリューム

その分厚さと難解な漢字、専門的な内容から、読むのに時間と集中力を要します。

読書に慣れている人や集中力のある読者により適しているかもしれません。

しかし、読み進めるうちに物語の深みに引き込まれ、ページをめくる手が止まらなくなります。

この作品をきっかけに、他のシリーズ作品にも興味を持てるかと思います。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

重厚すぎる

導入部分の関口と京極堂のやり取りだけでもかなりのボリュームがあり、その内容も本筋に繋がっているような感覚がなく、これは大変な読書になりそうだという不安が止みませんでした。

事が動き出すと、気になる謎な描写や、先の気になる展開でぐいぐい引き込まれました。

物語の過程で語られる知識やうんちくも私個人的には興味を持って楽しく読むことができましたが、人を選ぶかもなという気はします。

仮想現実というのがキーワードになっていたように思いますが、目に見えないものに対する考え方に新しい視点を与えてくれたように感じています。

ミステリーとして

密室殺人に関しては誰がどのようにというのはわりとシンプルでわかりやすかったですが、その事件をとりかこむ背景が異質すぎてミステリーを読んでいるという感じではなく、人間ドラマというかドキュメンタリードラマを見ているような感覚でした。

死体が見えていなかったとか、想像妊娠とか、多重人格とか、後から考えるとミステリーとしてフェアだろうか?とちょっと思ってしまう気持ちもありますが、

理路整然と語られていつの間にかそのような現象を受け入れて納得していたし、かつ衝撃的な展開に読む手が止まらなくなっていました。

久遠寺家の女系が3人とも亡くなり途絶えるというのは凄まじい展開ですよね。

簡単に考察してみる

個人的に混乱した点について考察してみます。

○関口と涼子の関係について

まず出逢いの発端は関口が牧朗から久遠寺梗子へ恋文を届けることを頼まれたこと。

届けに向かうと涼子に出逢い、梗子と誤って涼子に恋文を渡します。

そしてその時関口は涼子と関係を持つことになります。

関口がその時のことを悔いているような描写が度々あります。

まず、先輩が想いを寄せていた相手とそうなったことが理由としてあります。

また彼はかなりネガティブなので、自分が悪者であるとして「犯した」という表現をしています。

実態としては、その時涼子は「京子」モードであり、関口による一方的な行為であったとは思いにくいです。

○牧朗と梗子、涼子との関係について

関口が誤って涼子に恋文を届けたことにより、その時の牧朗は涼子を梗子と間違えたまま交際をしていました。

やがて涼子は妊娠するものの、牧朗は涼子と結婚する事は許されないまま戦争へ。

涼子は無頭児を産み母親にその子は殺されます(子を攫い殺すルーティンの始まり)。

その12年後に牧朗は戻ってきて今度は梗子と結婚。

牧朗は12年前の相手も梗子だと勘違いしているため、妊娠の話などを梗子にしても噛み合わず度々揉め事に。

戦争により牧朗は生殖能力を失くしており、梗子と子を為すことができないために、牧朗は異常なほど研究に没頭、梗子は歪み、内藤と関係を持つなどして、やがて事件当日を迎えることになります。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/姑獲鳥の夏

まとめ

以上、京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」の読書感想でした。

ミステリー好きのみならず、深い人間ドラマや知的好奇心を刺激する作品を求める読者にとって、必読の一冊のように思います。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。