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月は幽咽のデバイス/森博嗣 <あらすじ・感想・考察>Vシリーズ第3弾。凄惨な事件はオオカミ男の仕業?

読書感想です。今回は森博嗣さんの「月は幽咽のデバイス」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:月は幽咽のデバイス
  • 作者 :森博嗣
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :416P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • Vシリーズ前作を読んだ
  • ミステリー小説が好き
  • 哲学的な思考をすることが好き

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『美しい館にひそむオオカミ男の犯罪か!?
薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子(せざいまるべにこ)たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。紅子が看破した事件の意外な真相とは!?

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

Vシリーズ第3弾

Vシリーズの特徴であるスタイリッシュで知的なミステリーの魅力が存分に詰まった作品です。

シリーズものの続編ですので、前作を読んでいた方がキャラクターのことを知れているため楽しめるかと思いますが、物語としては単品でも成立している作品です。

月夜邸に現れるオオカミ男?

奇妙な噂がある屋敷にて、パーティの最中に衣服も引き裂かれた凄惨な死体が発見される。

謎の多い現場。意図も方法もわからない。

あるわけないと思いつつも存在を意識してしまうような怪しげな雰囲気を持つミステリーです。

鉄板の森ミステリィ

また、森ミステリィらしくただのミステリーに留まらず、科学や哲学、心理学など多岐にわたるテーマを内包しています。

特に、登場人物たちが交わす議論や観察は、物語の進行と並行して読者に新たな視点を与えてくれます。

この多層的な構造がVシリーズの持つ独特な魅力です。

一方で、ここまでのシリーズ作品もそうでしたが、謎解きのプロセスは徹底的に論理的でありながらも、結末はまた独特な余韻を残すもので、読後に再び物語を振り返りたくなる気持ちにさせられます。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

理性と感情

瀬在丸紅子と祖父江七夏のやり合いが面白くて印象的でした。

2人とも基本は理性的であるように見えますが、林が絡んでくると思わず感情が出てきてしまうという感じに人間味があって好感を持てます。

2人のやり取りは短い中で理性と感情の振れ幅が大きくて笑ってしまいます。

それにしてもそんな二人が執着する林の魅力とは一体何なのでしょうか。今のところはイマイチ掴めません。

事件の真相について

物事には何かの意図があるという先入観を持ってしまう、ということをテーマにした事件でした。

そのようなテーマであるが故の意外な真相です。

建物の構造がかなり特殊で、シンプルに驚けるものではなく想像するので精一杯でしたが、謎めいた状況には説明が付いてスッキリしました。

ただ、状況が明らかになったことで生まれた謎はそのまま取り残され、独特な余韻を感じます。

自分でスイッチを押したとは考えにくいような気もします。一緒にいた人物がやはり怪しいのではないでしょうか。

このように、人がなした行為でさえ、無意識、無意図のものが存在する。
人は常に理由を持って行動するのではない。
それにもかかわらず、常に理由を探そうとする。
まして、人が関わらない自然現象であれば、そこに意志や意図を見つけ出そうとすることが、結果的に歪んだ解釈を生み、間違った結論へと人を導くことにもなるだろう、
しかし、翻って考えれば、これらとは逆のケースも多い。自然現象のように見えても、実は密かに意図が隠れている場合である。~。意志も意図も作意も、賢いほど姿を見せない。
これらの対比は、実に不思議な相似をなしていないか……。
歌山佐季はソファのスイッチをどうして押してしまったのだろうか?

オスカーはオオカミか熊か

黒い獣。
大きな、四つ足の動物。
顔を上げると、頭の高さが、莉英の背とほとんど同じだった。
肉食の口、
そして牙。
銀色にも、金色にも見える目。

上記はどちらとも取れる特徴のように見えます。作中ではどちらとハッキリはされていません。ただ私が思うのは、

・オオカミを黒い獣と表現する?熊はしっくりくる。
・顔を上げて頭の高さが人と同じになる、という大きさはオオカミとしては大きすぎる?
・それを見た人たちの反応としてオオカミだとすると大袈裟に感じる。(オオカミだとしたら一見大きな犬くらいに見えるのでは?)

という感じで、熊の方がしっくりくるなとという意見です。

 
こよい
まぁだからといってどうということもありませんが、こんなことも考察してみたくなるのが魅力の一つですね。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/月は幽咽のデバイス

まとめ

以上、森博嗣さんの「月は幽咽のデバイス」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。