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日の名残り/カズオ・イシグロ <あらすじ・感想・考察>執事の誇りと後悔を辿る旅。

読書感想です。今回はカズオ・イシグロさんの「日の名残り」です。

カズオ・イシグロさんはノーベル文学賞受賞作家です。
「日の名残り」はブッカー賞を受賞しています。ブッカー賞はイギリスの文学賞で、世界的に権威のある文学賞の一つです。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:日の名残り
  • 作者 :カズオ・イシグロ
  • 出版社:早川書房(ハヤカワepi文庫)
  • 頁数 :368P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 心に響くテーマを持つ小説を読みたい
  • 穏やかでノスタルジックな雰囲気の小説を読みたい
  • 世界的に評価されている文学作品を読みたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『短い旅に出た老執事が、美しい田園風景のなか古き佳き時代を回想する。長年仕えた卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々……。遠い思い出は輝きながら胸のなかで生き続ける。失われゆく伝統的英国を描く英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

引用元:早川書房

感想

執事の日常

執事スティーブンスの視点を通して、時代の移ろいと人間の生き方について深く考えさせられる作品です。

物語は、彼がかつて仕えたダーリントン卿の館を離れ、旅に出るという形で進行しますが、その旅は単なる地理的移動を越え、彼自身の過去を振り返る内的な旅にもなります。

人間味のある登場人物

スティーブンスは名家に仕える執事として完璧な振る舞いを見せますが、決して無機質な人物ではありません。

とても真面目なのですが、何事にも真面目に向き合うことが時には可笑しく見えたりします。

シビアな世界の中に見える登場人物たちの人間味が共感を生み、彼らの物語に感情を揺さぶられます。

レトロで落ち着いた雰囲気

激動の時代が舞台となっていますが、タイトルにも通ずるような穏やかでノスタルジックな雰囲気が作品全体を包んでいます。

「古き良き」というイメージでしょうか。執事の視点として上品な文章で作られていますが、堅苦しいということもなく、温かい気持ちで読み進めることが出来ます。

生き方を見つめ直すきっかけに

個人の選択と時代の流れが交錯する中で、何を大切にすべきかを考えさせられます。

スティーブンスの物語は決して派手ではありませんが、その内面に隠された葛藤や感情は、現代を生きる私たちにも通じる普遍的なテーマを含んでいるように思います。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

執事の誇りと後悔

スティーブンスが強調する「品格」と「執事の誇り」は、彼の人生哲学そのものです。

執事としての完璧さを追求する彼の姿勢は尊敬に値しますが、同時に彼が失ったものは大きく、やりきれない気持ちになります。

ミス・ケントンとの関係は、その象徴のように描かれています。

スティーブンスは彼女からの感情的な接近を何度も受けますが、それを仕事に集中するためには不必要として切り捨てます。

彼女が結婚を決めて屋敷を去る前夜の会話で、スティーブンスが感情を露わにしなかった場面は、二人のすれ違いの象徴として痛ましく感じました。

彼はその後の人生で、彼女への未練を残しているにもかかわらず、再会の際にその思いを伝えることもなく、ただ彼女の現在の幸せを確認して帰るのみでした。

この再会はスティーブンスの孤独と後悔を象徴しており、その切なさに心を締め付けられました。

価値観の儚さ

また、ダーリントン卿が政治的に誤った選択をした過去について、スティーブンスがそれをどう受け止めるかも重要なテーマです。

主を無条件に信じ、仕えることが正しいと思い込んでいた彼が、後になってその信念を揺るがされる姿には、時代や環境によって左右される人間の価値観の儚さが表現されているように感じました。

人生の名残り

物語のもう一つの大きなテーマは「人生の名残り」かと思います。

スティーブンスは旅の中で、自身の選択が正しかったのかを問い直しますが、その答えを得ることはありません。

それでも、物語の最後に彼が「残りの人生で最善を尽くす」という考えに至るシーンは、過去に縛られるのではなく、未来に希望を見出すことの重要性を教えてくれます。

この結論に至るまでの過程が丁寧に描かれているため、私としてはとても共感できて、自らの人生について見つめ直すきっかけになりました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/日の名残り

まとめ

以上、カズオ・イシグロさんの「日の名残り」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。