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有限と微小のパン/森博嗣 -感想- S&Mシリーズ第10弾にして最終章。現実と虚構。天才との対決。

読書感想です。今回は森博嗣さんの「有限と微小のパン」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:有限と微小のパン
  • 作者 :森博嗣
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :880P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 前作までのS&Mシリーズ作品を読んだ
  • S&Mシリーズが好き
  • ミステリー小説が好き
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『「F」から始まり今ここに終結、そして拡散?
萌絵たちが訪れたテーマパークで次々と起こる不可解な事件の背後には。

日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は……。S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

S&Mシリーズ最終章
S&Mシリーズ第10弾にして最終章となります。シリーズものなので当たり前ではありますがこれを単品で読むことはおすすめできません。前作までの作品を読んでいることで最大限に楽しむことができる作品です。

分厚い…けど
シリーズ中最も分厚い作品になっています。880ページってよくある小説2~3冊分くらい?どうやって持って読もうかという悩んでしまいます。

ただ読み始めると、長くて大変とかは一切感じず退屈することもなく読み進められて、そういった意味でも衝撃的でした。シリーズファンなら必ず惹き込まれてしまう内容で、また後半に向けて緩むことなく物語が動いていき、こんなに長いのに楽しくて止め時が見つからないという嬉しい悩みを抱えることになります。

これを読まずしてS&Mを語れない
このシリーズの象徴的な作品は「すべてがFになる」でそれこそこのシリーズを語るうえで欠かせない作品だと思っていますが、この「有限と微小のパン」もそれに次ぐようなインパクトのある作品だと感じます。シリーズファンは英題を見るだけでもワクワクしてしまいますよね。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

トリックについて
事件のトリックは賛否両論ありそうです。すべてが作り物、過去に登場した警察の人もその中の一つとなると全く気付けませんでした。単なるミステリーとして見るとちょっと無茶だしずるいなという気持ちもありますが、私としてはそれよりなるほどねー!という驚きと感心の方が大きかったです。

『たった五十人のスタッフを動かすだけで、現存するどんなマシンにも実現できない非現実を被験者に体感させることができる。そう、その事実こそ、彼らが確証したかった対象です』

塙理生哉はただものではない雰囲気がありましたが、計画を利用されててんやわんやでフェードアウトしてしまい序盤に期待させたほどの活躍がなく残念でした。妹の香奈芽は裏がありそうで特になかったですが、犀川先生と萌絵の間をやや乱したのは好プレーでした。

登場する技術について
今の時代に読むと、似たような技術が現実にあるので自然と読めてしまいますが、今作は1998年に刊行されたものです。1998年って米Google社が創業、インターネット普及率20%未満、当然ガラケーでしかもインターネットには繋がらない?みたいな世の中です。どうしてそんな中で現代に近い技術たちを描けたのでしょうか。時間の感覚がよくわからなくなってきます。

真賀田四季
登場人物欄に真賀田四季の名前を見たときの気持ちの高まりはこのシリーズファンなら分かっていただけるでしょう。彼女や犀川先生が語る無駄をとことん排除し本質のみを追及するような思考には納得させられてしまいます。今作のテーマである現実と虚構、生と死といったことに今まで考えたことのない視点を与えられた気がします。しかし「よくわかりません」というのが正直なところ。私のこの「よくわからない」は非常に浅い自覚があります。

瀬戸千衣が四季だったのは驚きです。序盤読み返して「きゃあ、きゃあ!」とはしゃいでいるのを見ると、彼女はなんでもありなんだと改めて感じます。これも「両極に同時に存在することが可能」ということの一部かもしれません。

『小さな器に押し込むために、そんな約束が必要だっただけのこと。料理を味つけするように、道徳と装飾を仮想構築しているだけ。何故、本質を見ようとしないのかしら?』

『媒体と本質、メディアとコンテンツを見誤ってはいけません。』

『そう……。言語による単純化こそ、人間のノスタルジィの起源』

『その言葉こそ、人類の墓標に刻まれるべき一言です。神様、よくわかりませんでした……ってね』

これでシリーズ最後?
犀川先生が最後に四季がいた部屋で一片のパンを拾ってこの物語は終わります。「クライテリオン」の最後のメッセージを思わせるもので、このゲーム(今作の物語?)は終わりということを四季が告げたものでしょうか。

『汝、選ばれし者、ここに跪きて、我らの父より、一片のパンを受けよ』

最終盤は萌絵が置いてけぼりになってS&MのMって真賀田四季を表してるんだっけと思ってしまうほど萌絵が不憫でした。今作単品で見れば終わり方として納得できますが、シリーズ最終章として見るとまだシリーズの続きがあるかのようにぬるっと終わったなという印象です。

読む順番として次はVシリーズが推奨されていることを目にしますが、ということは何らか関連があるんだろうと期待しています。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/有限と微小のパン

まとめ

以上、森博嗣さんの「有限と微小のパン」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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