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天地明察/冲方丁 <あらすじ・感想・考察>暦を変えるために天地を知る。史実を基にした壮大な挑戦の物語

読書感想です。今回は冲方丁さんの「天地明察」です。

第7回本屋大賞受賞など、多くの評価を受けている作品です。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:天地明察
  • 作者 :冲方丁
  • 出版社:KADOKAWA(角川文庫)
  • 頁数 :(上)288P(下)304P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 歴史小説が好き

  • 科学や数学が好き

  • 努力や挑戦の物語が好き

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く――。日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。

引用元:KADOKAWA

感想

江戸時代の史実がベース

江戸時代に実在した渋川春海(安井算哲)の生涯を描いた歴史小説です。

彼は囲碁棋士の家系に生まれながらも、算術や天文学に情熱を注ぎ、日本独自の暦である貞享暦を制定するという偉業を成し遂げました。

そんな史実をベースにした物語になっています。主人公の渋川春海(安井算哲)は実在の人物です。

彼の心情や人間関係がドラマチックに描かれており、完全なノンフィクションではなく作り話の要素も入っています。

この小説のタイトルや歴史小説であるということから固い小説なのかなと構えていましたが、歴史に忠実な小説というよりは、史実をもとにしつつもエンタメ性を加えた作品という感じで、楽しく読み進められる内容です。

歴史に詳しくなくても楽しめますし、逆にこの小説を読んでから渋川春海について調べるのも面白いと思います。

熱い挑戦の物語

暦の誤差を修正するということが何を意味するのか初めのうちはわかりませんでしたが、読み進めるうちにその影響の大きさに気付きます。

当時の技術や知識が限られている中で、彼の探究心と情熱は計り知れないものがあります。

また、彼を支える仲間たちとの絆や、師匠との関係性も深く描かれており、人間ドラマとしても非常に魅力的です。

歴史小説らしさとエンタメ性の両立

歴史小説なので、時代に合わせた表現や文化が描かれるので、歴史小説に馴染みのない方はやや読みづらく感じるかもしれません(私です)。

また、細かい専門知識なども出てきて理解が追いつかないことに不安になるかもしれません。

ただそれらは全部把握できなくても十分楽しめます。

むしろ、専門的な部分は雰囲気を感じるくらいで読んで、春海の情熱とか周りの人との関係に注目する方が楽しめる作品かと思います。


以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

史実を調べたくなる 

私は描かれた時代のことをほぼ知らないので、フラットな目線で春海が進んでいく様子を楽しめたように思います。

ただ、史実を知ってると「この出来事がこう繋がるのか」という楽しみ方ができたのかもしれません。

歴史小説全般に対することになってしまいますが、史実を知りたくなるというのは歴史小説ならではのことで、自分の興味や知識を広げてくれるものなんだなと知ることができました。

そういう意味では、本作はエンタメ寄りな内容で読みやすいように書かれているので、歴史小説への入り口としては適していたのかなとも思います。

たくさんの想いが結集する
春海の周りには多くの印象的な人物がいました。一人一人がそれぞれの信念を持っていて魅力的でした。

春海ひとりの挑戦ではなく、周りの人たちの想いが積み重なって、それを背負いながら前に進む春海の姿がすごく胸を打ちました。

まず印象的だったのは、関孝和との関係です。満を持して対面した場面は興奮しました。

関は天才的な数学者でありながら、春海の挑戦を遠くから見守り、ときには厳しく、ときには助言を与えます。

彼の存在が春海の探究心をさらに強くしているような、登場していなくても大きな存在感を放っている人物でした。

そして、えんの存在も特別でした。

春海との出会いの場面も印象的で、穏やかな登場人物が多い中で、はきはきさばさばした性格と行動が一際魅力的でした。

それぞれの時間を経て再会し、春海を支えてくれる存在になったことにはとても嬉しい気持ちになりました。

最期も一緒だったというのはやり過ぎな気もしつつ温かい気持ちになりました。

春海の挑戦は、彼ひとりのものではなく、多くの人の願いと想いが積み重なってできたものでした。

そのことを思うと、最後に彼が成し遂げた瞬間には、ただの「成功」ではなく、「受け継がれた意志の結晶」のような感動がありました。

歴史小説でありながら、挑戦することの意味や、誰かの想いを背負って進むことの大切さを改めて考えさせられました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/天地明察

まとめ

以上、冲方丁さんの「天地明察」の読書感想でした。

歴史小説ではありますが、万人の共感を得られる内容だと思いますので、歴史や科学に興味がある方だけでなく、これまで歴史小説に馴染みのないような方にも読んでほしい作品です。春海の生き様は、現代を生きる私たちにも多くの示唆を与えてくれます。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。