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手紙/東野圭吾 <あらすじ・感想・考察> 背負わされた運命。手紙が繋ぐもの、断ち切るもの。

読書感想です。今回は東野圭吾さんの「手紙」です。

ドラマ化もされている有名作品です。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:手紙
  • 作者 :東野圭吾
  • 出版社:文藝春秋(文春文庫)
  • 頁数 :432P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 心揺さぶるヒューマンドラマが読みたい
  • 考えさせられる小説を読みたい
  • 社会問題に関心がある

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『罪を償うとは、絆とは…。強盗殺人犯の兄を持った少年の姿を通し、犯罪加害者の家族を真正面から描いて感動の渦を巻き起こした問題作

引用元:文藝春秋

感想

犯罪者の弟が背負う運命

犯罪加害者の家族が社会から受ける差別や偏見を描いた社会派ヒューマンドラマです。

物語は、兄・剛志が強盗殺人を犯し、その弟・直貴が「犯罪者の弟」として背負う運命を中心に展開します。

直貴は、兄の存在が原因で進学、就職、恋愛など人生の重要な局面で度重なる困難に直面します。

罪の影響

本作を通じて、「罪」の影響が加害者本人だけでなく、その家族や周囲の人々にも及ぶことを強調しています。

直貴の苦悩を描くことで、社会が加害者の家族に対して無意識に行う差別や偏見の深刻さを浮き彫りにしています。

手紙

タイトルにもなっているとおり、手紙が物語のキーとなっています。

登場人物たちの状況によって手紙が様々な意味を持って、見え方がどんどん変わっていく様子がとても印象的でした。

本作の特徴的で魅力的な要素の大きな一つのように思います。

社会派

東野圭吾さんといえばミステリー作家として有名ですが、本作は社会派作品なので、ミステリーが苦手な人でも読みやすい一冊です。

東野圭吾さんの小説はとても読みやすく、内容も外れがない印象で、本作も例に漏れず安定して面白い作品です。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

手紙の見え方の変化

特に印象的だったのは、直貴が兄からの手紙を受け取るたびに感じる複雑な感情です。

兄は獄中から日常の出来事や思い出を綴った手紙を送り続けます。

はじめのうちは直貴にとって唯一の繋がりでしたが、それらは自身の苦境を思い起こさせるものとなっていきます。

そして次第に距離を取るようになります。しかし最後にはまた違って見えるようになります。

同じ人物から同じような内容で送られてくる手紙が、受け取るのが誰で、その人がどういう状況で、ということによってこうも印象が変わっていくのは面白い作りだなと思いました。

直貴と剛志の最後の手紙については胸が締め付けられました。

直貴からの手紙をあのように受け取れる剛志はやはり悪い人間ではないと思ってしまいます。

私は手紙など書くべきではなかったのです。

常に一筋の希望

明るい未来が想像できず、どのようになってしまうのかハラハラしながら読み進めていましたが、常に直貴の側には希望と思えるものがあったのが救いでした。

特に由実子の存在は物語を通して不思議な安心感がありました。

はじめのうちはストーカーっぽくて危ない面もあるように見えましたが、絶妙な距離感で直貴の希望になっていたように思います。

2人が結ばれたことにはとてもほっとした気持ちになりました。

なぜ彼女は直貴に対してあれだけ献身的だったのか、最後までしっくりくる理由は見えませんでした。

終盤に彼女の背景も触れられていましたが、直貴に構い続けた理由とは別なんじゃないかなという気がしました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/手紙

まとめ

以上、東野圭吾さんの「手紙」の読書感想でした。

罪を犯すこと、その影響について深く考えさせられる作品です。犯罪者の家族はどう生きていくべきか? 社会は彼らをどう受け入れるべきか? そうした重いテーマに向き合いたい人におすすめです。感動しつつも、読後にいろいろと考えさせられる作品なので、じっくり味わいたい人には特に向いているかと思います。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。