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葬送のフリーレン(1) -感想・考察- 魔王討伐後日譚ファンタジーの始まり

読書感想です。今回は漫画、「葬送のフリーレン」の第1巻です。
原作: 山田鐘人さん、作画: アベツカサさんの作品です。
ネタバレを含みます。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えません。

内容紹介

魔王を倒した勇者一行の後日譚ファンタジー
魔王を倒した勇者一行の“その後”。
魔法使いフリーレンはエルフであり、他の3人と違う部分があります。
彼女が”後”の世界で生きること、感じることとは--
残った者たちが紡ぐ、葬送と祈りとは--
物語は“冒険の終わり”から始まる。
英雄たちの“生き様”を物語る、後日譚(アフター)ファンタジー!

引用元:小学館コミック

感想・考察(ネタバレ有り)

内容に触れながら感想を書きますので、開く際はその点についてご了承ください。

続きを読む ※ネタバレ注意

魔王を倒した勇者一行の後日譚ファンタジー

魔王討伐の後日譚という目の付け所が大きな特徴ですね。ゲームとかでもその後どうなったのかなと想像するしかなかった部分です。

とはいえ、魔王討伐した後って何か描くことあるの?と疑問にも思えます。しかしそんな疑問も序盤であっという間に解消され、この作品の雰囲気に引き込まれて行きました。魔王討伐の後日譚になるので、穏やかで淡々とした雰囲気を持つのも特徴的ですね。

作品のタイトルになっているフリーレンが主要人物で、魔王を討伐した勇者一行の中の魔法使いであるエルフであり、人間よりもはるかに長寿であることがこの作品の肝になっています。フリーレンが淡々とした性格なのもこの作品の穏やかで淡々とした雰囲気を助長しているように思います。

以下の勇者ヒンメルの台詞はこのお話の特徴を表しており、確かにそうだよなと思わされました。人間であるヒンメルにとってもそうであるということは、フリーレンにとってはなおさらそうであるということでもあります。

「魔王を倒したからといって終わりじゃない。この先の人生の方が長いんだ。」

半世紀(エーラ)流星の場面はとても印象的でした。魔王討伐後に見た流星は次にみられるのは半世紀後(50年後)となります。フリーレンたちはよく見える場所でまた見ようと約束するわけですが、その間わずか数ページで50年後まで飛びます。あくまでフリーレンの物語である、という時間の感覚の差を感じます。老いぼれているヒンメルと変わらないフリーレンが如実にそれを表しています。

勇者ヒンメルの死

そして訪れるヒンメルの死。それを目の当たりにしてフリーレンには経験にない感情が生まれたように見えます。フリーレンにそう思わせるようなヒンメル、ヒンメルとの旅がどんなものだったのでしょうか。

「なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」
「私はもっと人間を知ろうと思う。」

フリーレンは再び旅を始めます。

ここから話の節で「勇者ヒンメルの死からxx年後」という表現が使われますね。これもまた時間の流れを感じさせるためのもののように思います。

フェルンとの出会い、ハイターとの別れ

フリーレンが僧侶ハイターに会いに行く道中で、この作品でフリーレンに次ぐ主要人物となってくるフェルンと出会います。南側諸国の戦災孤児という背景もどこかでまた描かれるのでしょうか。フェルンは健気で可愛いですね。

「とてもよいことでございますね。」のシーンのフェルンはただ者ではない感がすごいです。何かただならぬ背景を感じます。「魔法は好き?」「ほどほどでございます。」も意味深なやり取りです。

ハイター、フェルンとともに過ごす場面の中で、その後よく目にするこの作品における名台詞の一つが登場します。

「なんでフェルンを救ったの?」
「勇者ヒンメルならそうしました。」

ハイターとの別れのシーンも良いです。ハイターも勇者の意思を失くさないように生涯を全うし、それにより救われたフェルンがフリーレンとともにまた旅を始める、という勇者一行の想いが繋がれていく様子が感動的です。フリーレンに諭されてハイターとフェルンが一緒に過ごすシーンは温かい気持ちになります。

フリーレンが趣味だと言って集める面白い魔法。1巻では「温かいお茶が出てくる魔法」などが出てきました。今後どんなものが出てくるのか楽しみです。

趣味の魔法集めもそうですが、この後はフリーレンがヒンメルを形跡を追いかけるお話が続きます。蒼月草の花探し、新年祭の日の出。フリーレンの心の中のわずかな変化が見える描写がたびたび出てきます。

「わからない。だから知ろうと思っている。」
「あなたが私を知ろうとしてくれたことが、堪らなく嬉しいのです。」

腐敗の賢老クヴァール

腐敗の賢老クヴァールの話はまた少し毛色が異なる、後日譚ということを活かされた話ですね。勇者一行がクヴァールと対峙した当時は史上初の貫通魔法として猛威を振るった『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』。勇者一行も討伐まで至らず封印という形対処したわけですが、強すぎたが故に研究されつくされ、クヴァールはフェルンの教育がてらフリーレンに討伐されてしまうわけです。当時の魔王の存在すら、今の時代だとどうなのか?とも思ってしまいます。現実における技術の進歩とリンクしてファンタジーでありながらリアルさを感じて、なるほどなーと感心しました。
しかしクヴァールが脅威的な相手だったこともわかる場面でした。瞬時に新時代の魔法を分析して弱点を理解する。知的で柔軟な対応ができることが表れています。勇者一行との戦闘がどんなものだったのか気になります。

戦士アイゼンとの再会

次に戦士アイゼンのもとを訪れるフリーレン。アイゼンもまた勇者一行との旅に大きく影響を受けた存在のように見えます。死んだあとは無に還ると考えていたドワーフ、そしてドワーフは伝統を重んじる種族。しかしアイゼンは勇者一行との旅の中でのハイターの言葉、天国はあると思う方が都合がいいという考え方に共感します。お墓の前で祈るというシーンには、勇者一行との旅がアイゼンにもたらした影響が見えます。

アイゼンはヒンメルの死後にフリーレンが悲しむ様子を見て、ハイターと相談して大魔法使いフランメが遺した手記を共に探すように仕向けます。アイゼンは仲間想いでいいやつですね。

そしてそれをきっかけに、フリーレンの旅の目的は大陸北部エンデにあるとされる「魂の眠る地(オレオール)」へ向かいヒンメルと話をする、ということになります。しかしそこは魔王城がある場所でもある。
ということで、第1巻は終わりです。

なぜそこに魔王城があるのか、そこには何が待っているのか、想像が膨らみますね。

繰り返しですが、遥かに長く生きているフリーレンの心をここまで動かすヒンメルとその旅がどんなものだったのかとても気になります。今後描かれるだろうと期待しています。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/葬送のフリーレン(1)

まとめ

以上、「葬送のフリーレン」第1巻の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。