読書感想です。今回は三浦綾子さんの「塩狩峠」です。
三浦綾子さんはクリスチャンで、キリスト教の信仰に根ざした著作を多く残されている方です。この『塩狩峠』はそんな三浦さんの代表作の一つです。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。
作品情報
- 作品名:塩狩峠
- 作者 :三浦綾子
- 出版社:新潮社(新潮文庫)
- 頁数 :464P
こんな人におすすめ
- 感動する物語を読みたい
- 生き方についての考えることへのヒントを得たい
- キリスト教の信仰についてよくわかっていないが知っておきたい
特徴グラフ
※私個人の見方・感想です。
あらすじ
『結納のため、札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。』引用元:新潮社
感想
本の裏にあるあらすじ(上に記載の通り)に結末が書いてあるんですよね。そこに至るまでの物語を知るのと知らないのでこの結末に感じる思いがまるで変わります。
まず、宗教が絡む話と聞いてウッと気が引ける方がいたとしたら、それでこの作品を知れないことは損な気がします。むしろそういう感覚を持つ方こそ読んでみたら世界が広がるかもしれません。
私が感じたこの作品のテーマは「原罪」「生と死」「愛」です。これらについてキリスト教の価値観をもとに主人公の人生を通じて考えるような物語です。物語に起伏があるという感じではなく割と淡々と進んでいく印象です(結末を除いて)。そのようなありふれた人生の中の苦悩について上に書いたテーマを中心に考えるというのがこの作品なのかなと思います。キリスト教信者以外の登場人物も多く、あらゆる考え方が飛び交うので価値観を押し付けられる感覚は全くなく、その中で自分はどう思うかを考えたくなります。
明治の時代に生きる男性の生涯が描かれている作品です。主人公は最初はキリスト教を嫌う立場です。多くの人が同じように感じるような人生における様々な苦悩に向き合っていきます。そんな人生の道筋の中でキリスト教への信仰が関わってきます。私自身に馴染みのない信仰の話であり異質なものと捉えがちですが、同じような感覚を持っていた主人公の物語を通すことで自然と新たな価値観として受け入れられました。
作中に出てくる聖書に基づく考え方は極端だと思う部分もありますが、それが現実にどのように現れてくるか、この物語での登場人物の行動からイメージすることが出来たような気がします。この作品は聖書の一部をより近い時代の物語で表現したものなのかもしれません。私はキリスト教に詳しくなく信仰しているわけでもないので、この作品から生き方について新たな価値観を教わったように思います。(それが自分の価値観を書き換えるほどかどうかは置いておいて。)
そういったことを知り考えた上で直面するこの結末に、答えが出せないような複雑な思いを感じました。
主人公のモデルになった人物が実際にいたと知り、それもまた驚きです。(諸説あり、あくまでモデルになっているだけでノンフィクションではないということのようです。とはいえその人物は主人公に勝るとも劣らないような方だったそうです。)
以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。
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まとめ
以上、三浦綾子さんの「塩狩峠」の読書感想でした。
自分が持っていなかった新たな価値観としてキリスト教についてもっと知ってみたいような気になりました。偏見で判断せず、知った上で合う合わないを自分で判断することが大切かと思います。
未読の方は是非手に取ってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。