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遮光/中村文則 -感想- それは純愛か、狂気か

読書感想です。今回は中村文則さんの「遮光」です。
第26回 野間文芸新人賞を受賞している中村文則さんの初期代表作です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:遮光
  • 作者 :中村文則
  • 出版社:新潮社(新潮文庫)
  • 頁数 :160P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 暗い雰囲気の作品を読みたい
  • 狂気を感じたい
  • 胸焼けするような作品を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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3
4
5
読み応え
1
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5
過激表現
1
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3
4
5

あらすじ

『恋人の美紀の事故死を周囲に隠しながら、彼女は今でも生きていると、その幸福を語り続ける男。彼の手元には、黒いビニールに包まれた謎の瓶があった──。それは純愛か、狂気か。喪失感と行き場のない怒りに覆われた青春を、悲しみに抵抗する「虚言癖」の青年のうちに描き、圧倒的な衝撃と賞賛を集めた野間文芸新人賞受賞作。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家の初期決定的代表作。』

引用元:新潮社

感想

主人公の青年が恋人を事故で失うことから始まる狂気の行方が描かれています。

胸焼けしているようなもやもやした気味悪さが常にあります。ただ、青年の行動はまったく理解できないということではなく、どこか自分の中にも違う形で持っていると思うような身近な狂気なのかもしれないと思わされます。読み終えた後には自分を見失いそうな、自分さえ疑ってしまいそうな感覚になりました。それほど引き込まれてしまっていたことに気付きます。

以下、内容に触れた感想を記載します。内容に触れないと感想が書けない部分も多く、ネタバレがどうという作品ではありませんので未読の方でも読んで支障ないかとは思いますが、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

行き過ぎた現実逃避。恋人の死に対する逃避であれば指を持っておくことは逆効果な気がします。なので恋人の死という事実そのものではなく、人との繋がりや恋や愛のような、自身を保つための概念のようなものを繋ぎ止めるための”指”なのかもしれません。

社会的には破滅の道を進むのみになってしまいましたが、恋人を失った事実からくる悲しみや怒りを避けることは出来ていて、そういう意味では自分の心を救うことには成功しているのかもしれません。自分の心を救うためには社会的立場は無視して恋人との繋がりを保ち続けるしかなく、結末の行動は理解できないものの起こるべくして起こった行動だと感じました。

行動そのものは狂気的で理解できないものの気持ちは分かる、というのが不思議なところです。失う怖さを直視できない弱さは私にもあります。ただ表し方が違うというだけで自分がこの青年のようになっていないのは紙一重の違いでしかないのかもしれません。虚言癖についてもペラペラ嘘をつくということはなくても、自分が何かを演じている、それにふと気付く瞬間がある、というのは思い起こすと似た感覚を持つことがあるような気がします。この考え方に触れたことで自分を見失いそうな感覚になります。”自分自身”の脆さ、危うさを内に秘めていることを知りました。

周りの友だち?からは彼がどう見えてるんだろうというのはちょっと疑問でした。友だちやその周囲で起きることに対しても全ておかしな反応をしているように見え、こいつはやばいとか距離を置こうとか思いそうな気もしますが…。自分たちのための少しやりすぎた行動をしただけとかふざけてるだけと捉えられたのか、もう少し友だち視点で読めばわかるでしょうか。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/遮光

まとめ

以上、中村文則さんの「遮光」の読書感想でした。
独特な雰囲気の作品で癖になりそうです。中村さんの別の作品も読んでみたくなりました。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。