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線は、僕を描く/砥上裕將 -感想- 白黒に描かれる色とりどりの命。水墨画って面白い。

読書感想です。今回は砥上裕將さんの「線は、僕を描く」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:線は、僕を描く
  • 作者 :砥上裕將
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :400P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 芸術をテーマとした穏やかな小説を読みたい
  • 感動したり熱い気持ちになる小説を読みたい
  • 賞受賞、漫画化などされている有名作品を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」家族を失い真っ白い悲しみのなかにいた青山霜介は、バイト先の展示会場で面白い老人と出会う。その人こそ水墨画の巨匠・篠田湖山だった。なぜか湖山に気に入られ、霜介は一方的に内弟子にされてしまう。それに反発する湖山の孫娘・千瑛は、一年後「湖山賞」で霜介と勝負すると宣言。まったくの素人の霜介は、困惑しながらも水墨の道へ踏み出すことになる。第59回メフィスト賞受賞作。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

水墨画というテーマ
本作は、水墨画がテーマとなっています。一見とっつきにくいようにも思うかもしれません。

主人公である青山霜介は水墨画とは無縁な学生で、偶然の出会いから水墨画の世界に足を踏み入れていきます。私も水墨画とは無縁ですが、主人公と同じ目線で水墨画のことを知っていくことになり、とっつきにくいという印象をむしろ活かして興味を惹く物語になっているように思いました。

静かでありながらも力強い
この作品の魅力の一つは、静かでありながらも力強い描写です。水墨画という伝統的な芸術が持つ哲学と、青山君が自分自身と向き合いながら成長していく過程が丁寧に描かれています。派手な展開はなくても、絵を描く過程、水墨画に向き合う人の心などには内に秘めた熱量を感じます。水墨画というもの自体が持つ魅力が物語に反映されているのかなと感じます。

人の心と絵
主人公の周りには個性的な人物がたくさん登場します。水墨画を通じてその人物の個性を知るという視点が面白いです。芸術にはそれに関わる人の心が表れるものであり、表面に表れるものよりも本質的な、繊細な人の内面が伝わってきて、心地よさを感じたり、胸を打つ場面が多くありました。

我ながら単純ですが、奥深い水墨画に興味がわいて触れてみたくなりました。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

水墨画を知ること
限られた一面しか見られていないかと思いますが、それでもこれだけ奥深さを感じる水墨画に興味を惹かれて止みません。技術や歴史のことで初めて知ることに驚いたり、水墨画への向き合い方に感動したり。もっとこの世界を知りたくなりました。

『水墨画というのは、水暈墨章という言葉が元になっている』
『自分の画に自分で賛を入れることを自画自賛という』
『水墨というのはね、森羅万象を描く絵画だ』
『現象とは、外側にしかないものなのか?心の内側に宇宙はないのか?』

湖山先生の意図
言わずもがなですが、湖山先生の存在が青山君にとっての導き手として大きな役割を果たしている点も重要でした。湖山先生は、ただ技術を教えるだけでなく、青山君が自分自身と向き合い、内なる葛藤を解消するための助言を与えていた。その教えを通じて、青山君が絵を描くことの意味を深く理解し、成長していく姿に胸を打たれます。

湖山先生が青山君に自分の過去を映し、自分が出来る唯一の手段として水墨画によって青山君を導きたかったと打ち明けた場面では、そこまでの過程がその思いに収束することを思うと目頭が熱くなるほどぐっときました。

もっとこの世界を見ていたい
魅力的な登場人物が多くいました。千瑛さんと青山君とはどういう関係になっていくのでしょうか。古前君と川岸さんはその後も青山君の周りを賑やかしてくれるのでしょう。

物語としてもその後どうなった?と気になる部分もあり、まだまだこの世界に触れていたい、これで終わってしまうのは寂しいな、と感じるほど魅力的でした。と思っていたら、続編があるんですね。「一線の湖」。こちらも必ず読んでみたいと思います。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/線は、僕を描く

まとめ

以上、砥上裕將さんの「線は、僕を描く」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。