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ペンギン・ハイウェイ/森見登美彦 -感想- 突如住宅街に現れるペンギンから始まる青春冒険ファンタジー

読書感想です。今回は森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」です。
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記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:ペンギン・ハイウェイ
  • 作者 :森見登美彦
  • 出版社:KADOKAWA(角川文庫)
  • 頁数 :400P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 「冒険」「謎解き」「青春」のようなわくわくする小説が読みたい
  • 爽やかなファンタジー小説が読みたい
  • アニメ映画化もされた有名作品を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

僕は知りたい。この世界の始まりについて、そしてお姉さんの謎について。
ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした──。少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。第31回日本SF大賞受賞作。

引用元:KADOKAWA

感想

森見登美彦さんの作品は文章が特徴的で好みが分かれるのかな?と思いますが、私はその独特なテンポがとても好きです。この作品は頁数がそれなりにありますが、思わず微笑んでしまうような軽快な文章で描かれ、最後まで楽しく心地良く読めました

主人公は小学生の男の子アオヤマ君。小学生らしくなく達観して理性的、研究熱心という個性的なキャラクターです。そんな彼の周りでたくさん起こる不思議な現象。またそれに関係していると思われる謎のお姉さんの存在。それらの謎を解くために小学生なりの知恵を振り絞って研究を行っていきます。謎を追求していく様子はミステリー小説を読んでいるような感覚にもなります。小学生らしい純粋な考察が可愛らしく微笑ましくあったりもします。

仲間との冒険や、同級生とのいざこざ、お姉さんや周りの大人から得る学び、そのようなアオヤマ君の成長過程や青春を感じる要素も特徴です。ただ、アオヤマ君が達観しており、大人でもそんな反応はできないと思うほど落ち着いた反応をします。それが可笑しくもありながら、感心してしまうような斬新な視点に感じられます。大人がそのまま子どもになったというのとも違う、純粋さが含まれていることにより生まれる一風変わった青春の体験だなと思います。

物語の終盤に向けた盛り上がりは絵に描いても華やかに見えるような爽快さがあり、また彼が純粋であるが故の感傷的な展開には目頭が熱くなりました。

私がしっかり読み切れていないだけではありますが、様々な不思議な現象について、少し絵がイメージがしにくいような部分もあり、その辺はアニメ映画を見たときに答え合わせができるかなと期待しています。

以下、内容に触れた感想を記載します。謎の真相も含みますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

ませた小学生、というと大人の真似をしているようなちょっと鼻につく場合があるような子を想像しますが、主人公のアオヤマ君はそれとはちょっと違う印象です。アオヤマ君はあくまで自分はこうありたいという人物像を持って自分なりに努力をしているだけで、自分が未熟であることを理解しているような台詞も度々出てきます。そういった意味ではませた小学生というよりもすでに大人より大人であるように見えます。その中に小学生らしい純粋さも兼ね備えているため、私に無い不思議な視点で進んでいく面白さがありました。

「スズキ君帝国」からの攻撃へのアオヤマ君の反応もいちいち斜め上を行きます。相手が喜ぶ反応をしないように、なんて冷静にいられるのはそれが正しいとわかっていても大人でも実践するのは難しいです。アオヤマ君はファンタジーな存在過ぎる気もしますが、そのような大人と子供両方の視点を持つようなアオヤマ君の振る舞いから私自身の未熟さに気付かされました。

そんなアオヤマ君とお姉さんの関係にはほっこりするような魅力がありました。アオヤマ君はお姉さんに非常に興味があるわけですが、その気持ちが何なのかということは考えずに純粋にその興味があるという気持ちでお姉さんと行動を共にします。そして結末にはお姉さんとのお別れが必要であることに気付きその事実を目の当たりにすることで、お姉さんのことが大好きだったことに気が付きます。こんな風に恋の存在に気付く、ファンタジーな純粋さと切なさに涙が込み上げました

結局、様々な不思議な現象はすべてが関連していたということですが、簡単に整理をしてみようと思います。

「お姉さん」は「海」を消すための存在で、海を消せる「ペンギン」を作り出すことができる。一方で「お姉さん」のエネルギーは「海」の大きさと連動しており、「ペンギン」を作り「海」が消失していくことで「お姉さん」自身も消失していってしまう。「お姉さん」は自身がエネルギーを得るために「海」を大きくする「ジャバウォック」を作り出すことができる。「ペンギン」と「ジャバウォック」という相反する存在を「お姉さん」は作り、自分が存在するためのバランスを取っている。ただし「海」は世界の理から外れる穴のようなもので、それが残っていると世界にどんな影響があるかわからない。物語の終盤には「ジャバウォック」が優勢になったことにより「海」のバランスが崩れ大きくなりすぎて世界に大きな影響を与え始めたことから、「お姉さん」は「ペンギン」を大量に作り出し、自信が消失することも覚悟の上で「海」を消失させた。

こう書くと読み始めたときには想像つかないほどファンタジーな世界観ですね。結局「海」がどういう存在なのかなど曖昧な部分も残されているので、よくわからなかった、という感想を持つ方もいるのかもしれません。この後の物語としてアオヤマ君がそれらの謎をさらに追及しお姉さんと再会する方法を見つけ出す…といいな、みたいな想像を私はしてしまいます。

細かい部分ですが、ウチダくんの「誰も死なない」仮説は面白かったです。主観で見ている以上は生きている分岐にいるはずなので常に生死の分岐の生の道を進み続けるはずであるということです。そうであると仮定して、寿命なりその他の事由で死の直前まで至った場合、主観ではその瞬間に死ぬ道とその一瞬先まで生きる道の分岐の生きる方が選ばれる、ということがどんどん短い間隔で繰り返されることになり、死の瞬間で時間が止まったようになるんですかね。そう思うとむしろ怖い仮説のようにも思えます。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/ペンギン・ハイウェイ

まとめ

以上、森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」への読書感想でした。アニメ化に適していることがよくわかるような華やかで可愛らしい絵が想像できるファンタジー小説でした。
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森見登美彦さんの作品についてほかにも感想記事がありますので良ければそちらもご覧ください。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。