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数奇にして模型/森博嗣 -感想- S&Mシリーズ第9弾。怪しすぎて逆に怪しくない?正常と異常の違いとは。

読書感想です。今回は森博嗣さんの「数奇にして模型」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:数奇にして模型
  • 作者 :森博嗣
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :720P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 前作までのS&Mシリーズ作品を読んだ
  • S&Mシリーズが好き
  • ミステリー小説が好き
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
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5

あらすじ

『密室の中には首なし死体と容疑者が
模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

独特な構成
あらすじにもある通り、表面上明らかに怪しい人物というのが初めからわかっている状態から真相を追っていくという構成になっています。プロローグから期待が高まるような話の展開であっという間に心を掴まれます。

模型と人形
模型交換会という(私はあまり聞いたことがなかった)イベントが主な舞台の一つになっています。模型と一言で言ってもその中には様々な趣味趣向があり、哲学があります。シリーズお馴染みという感じですが、そのような独特な思想や哲学に触れられることが魅力の一つです。

魅力的な登場人物、軽快なやり取り
犀川先生と萌絵の新たな関係者が登場したり、これまでに登場した人物の活躍も目立ったり、シリーズもののドラマやアニメを見ているようなエンタメ感を強く感じました。これまでの作品にもあったようなユニークでリズミカルなやり取りが多めにあったように感じ、その点でもとても楽しめました。

ボリュームを感じさせない
読み始めるのを躊躇いたくなるほど分厚い小説になっていますが、精密で読みやすい文章、事件の展開、クスッと笑えるような幕間のやり取り、引き込まれる思想や哲学など、退屈する暇がなくボリュームを忘れてあっという間に読み進められます。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

トリックよりも思想
この物語の性質としてトリックはとてもわかりやすく解説も不要なくらいで、そこにある思想が肝となっていました。寺林だったら容易に可能な状況、しかしあからさま過ぎて裏があるように見える、それを逆手に取ったような構造になっていました。ただ、寺林は逆手に取ったとは思っておらず、単純に絶対的な目的に向かって進んでいただけで、嘘や仕掛けもその場しのぎでも構わないような些細な手段の一つでしかなかったのです。衝動的だが冷静。くせ者な狂人でゾクッとしました。

緊張感がたまらない
筒見紀世都と萌絵が2人で過ごすシーンや、火事のシーン、ヒヤヒヤするシーンが多くありました。萌絵の大胆不敵な行動はこれまでのシリーズでもお馴染みで、またか…という呆れた気持ちとキタキタ!という気持ちが半々になります。

最後の寺林との対決はかなり緊張感ありました。この絶望的な状況で犀川先生はどう逆転するの?と不安になりましたが、流石でした。クリップを人質の取るやり取りにも笑ってしまいましたが、クリップがまたここで活躍するとは驚きでした。

キャラクターの魅力
新キャラクターの大御坊はインパクトのある個性で、ユニークなやり取りの幅を広げていました。その他今回は金子など既存キャラクターの活躍も目立ちましたが、私として印象的だったのは国枝先生です。今作では彼女の人間味が感じられて少しホッとするような気持ちになりました。結婚によるわずかな変化が表れているのかなと思えます。萌絵に語った正常、異常の考え方についても興味深く、彼女らしい理路整然とした考え方だなと感心しました。

好きにしてもok
紀世都の手紙とラストのシーンのジオラマの存在が、この物語の解釈を惑わせます。紀世都は何者だったのか、と余韻を残す終わり方となっています。例えば、紀世都は寺林の計画を知っていて、半ば共犯者として計画に荷担し、最後には自らの命をも提供した…というような異常な解釈も今回の物語を読んだ後だとありえるのかもと深読みすることもできます。

私としても紀世都は全てを把握していたように思え、自分の死さえも計画通り、その過程、この物語自体が彼の芸術である、みたいな解釈ができそうかなと思っています。それくらいただ者ではない印象が強かったです。

タイトルの『数奇にして模型』は「好きにしてもOK」というダブルミーニングになっているそうで、このラストシーンは好きに解釈してねというメッセージでもあるとのこと。(ソースは見つけられませんでした。)皆さんはどう解釈しましたか?

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/数奇にして模型

まとめ

以上、森博嗣さんの「数奇にして模型」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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