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ノルウェイの森/村上春樹 -感想- 100パーセントの恋愛小説?国内累計発行部数1000万部以上。

読書感想です。今回は村上春樹さんの「ノルウェイの森」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:ノルウェイの森
  • 作者 :村上春樹
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :(上)304P(下)296P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 考察が捗る恋愛、成長小説を読みたい
  • 静かな雰囲気の小説が読みたい
  • 超有名ベストセラー小説を読んでおきたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
1
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5
読み応え
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過激表現
1
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3
4
5

あらすじ

『限りない喪失と再生を描く究極の恋愛小説!
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

国内累計発行部数1000万部以上
本作は村上春樹さんの5作目の長編小説です。あまりに有名な作品ですね。発行部数1000万部以上って凄すぎてもはやよくわかりません。

『100パーセント恋愛小説』?
村上春樹さん自身がつけたキャッチコピーだそうです。『これは100パーセントのリアリズム小説です』と書きたかったとも仰っているそうです。本作を読んでみると村上春樹さんの作品としての本作の特性としてどちらも言わんとしていることは何となくわかります。が一方で、読む前に『100パーセント恋愛小説』と見てイメージする印象とは合わない気がします。単なる恋愛小説として読むにはあまりに深みがあり、文学的です。

すっと物語に入り込んでしまう
村上春樹さんの文章は平易でリズミカル。なぜなのかわかりませんが、読み始める前に頭がごちゃごちゃしていたとしても、読み始めるとすっと小説の世界に入り込めてしまうような心地よい文章です。作品全体の静けさも相まって、なんとなく落ち着きたいときや内省したいときに読みたくなる作品です。ユーモアのあるやり取りなど楽しい気分になれる場面がそれなりにあるのも私としては好印象です。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

印象的だったフレーズ
永沢さんの以下の台詞は印象的でした。
『自分に同情するな』
『自分に同情するのは下劣な人間のやることだ』

あとは、緑の今一番やりたいことのくだり、ワタナベの「やれやれ」までがセットで可笑しくて好きでした。

考察
死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。
喪失と再生
死と生(性)
直子と緑

様々な対極に見える要素が物語中に散りばめられており、その中で揺れ動くワタナベという全体の構図になっていました。ワタナベから見ると、直子と緑が喪失と再生、死と生(性)を体現しています。ただ彼女たちはどちらか一方の要素だけを持ち合わせているのではなく、彼女たちもまたどちらかに偏りながらもその境目で揺れ動いています。そこを決定的に分けるのがそこまでの人生や人間性。直子は死に、緑は生きている。その狭間にいるワタナベは自分はどこにいるのか?と問うところで物語は終わります。ワタナベが自分自身の死と生、喪失と再生を意識した瞬間なのかなと思います。

直子は僕のことを愛してさえいなかったからだ。
前の文章も含めて見てみます。

何故彼女が僕に向かって「私を忘れないで」と頼んだのか、その理由も今の僕にはわかる。もちろん直子は知っていたのだ。僕の中で彼女に関する記憶がいつか薄らいでいくであろうことを。だからこそ彼女は訴えかけなければならなかったのだ。
「私のことをいつまでも忘れないで。私が存在していたことを覚えていて」と。そう考える僕はたまらなく哀しい。何故なら直子は僕のことを愛してさえいなかったからだ。

パッと見、というかよく読んでもその結論への至り方がよくわかりません。ここも明文化されているわけではないので、いろいろな解釈があると思います。

単純に考えてみます。「忘れないで」と言うのは離れることを前提にした言葉です。この会話をしている時点ではまだ直子は生きており、ワタナベからしても死ぬなんてことは想定していなかったはずです。直前に井戸の話などをしていた流れで出た発言程度に思うでしょう。しかしその後直子は死にます。「忘れないで」の真意として、その時点で直子はキズキと同じ領域へ行くことを決めていた、つまり直子は生きるに値する愛をワタナベには持てなかった、とワタナベは受け取ったのではないでしょうか。

こんな解釈だと「愛してさえいなかった」という表現は極端すぎる気はします。ワタナベとしても直子の生と死の揺らぎに影響を与えていた実感はあるはずで、そこに全く愛がないとは思えないと思います。もっと適切な解釈がきっとあるのでしょう。

レイコさんの闇
他の方の情報を見ていると、レイコさんは極度の虚言癖があるとして見ることもできる、ということを目にしました。私は読んでいる間はそんなこと思いつきもしませんでしたが、レイコさんの過去やその他レイコさん発していた情報は客観性がなく嘘が含まれていてもおかしくない、というのは確かにそうだった気がします。そうやって見ると物語の多くの重要な部分がかなり異なって見えてしまいます。

ただ私はシンプルにレイコさんのことを信じる形での読み方の方が好きだなと思います。そういう推察もできるということを知った上でどう受け取るかというのも読者の個性が出そうですね。私はレイコさんの以下の台詞に虚言癖のような濁りを含めたくありません。ワタナベに必要なことがストレートに込められていて心に刺さる台詞でした。

あなたがもし直子の死に対して何か痛みのようなものを感じるのなら、あなたはその痛みを残りの人生を通してずっと感じ続けなさい。そしてもし学べるものがあるのなら、そこから何かを学びなさい。でもそれとは別に緑さんと二人で幸せになりなさい。あなたの痛みは緑さんとは関係ないものなのよ。これ以上彼女を傷つけたりしたら、もうとりかえしのつかないことになるわよ。だから辛いだろうけど強くなりなさい。もっと成長して大人になりなさい。私はあなたにそれを言うために寮を出てわざわざここまで来たのよ。はるばる棺桶みたいな電車に乗って。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/ノルウェイの森(上)

読書メーター/ノルウェイの森(下)

まとめ

以上、村上春樹さんの「ノルウェイの森」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。