当サイトの本に関する記事はすべてネタバレに配慮しています。御気軽にお読みください。

N/道尾秀介 <あらすじ・感想・考察> 1冊で720通りの物語ってどういうこと?

読書感想です。今回は道尾秀介さんの「N」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:N
  • 作者 :道尾秀介
  • 出版社:集英社(集英社文庫)
  • 頁数 :408P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ギミックが話題となった有名作品を読みたい
  • 特殊な読書体験をしたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
1
2
3
4
5
読み応え
1
2
3
4
5
過激表現
1
2
3
4
5

あらすじ

『全六章。読む順番で、世界が変わる。あなた自身がつくる720通りの物語。
すべての始まりは何だったのか。結末はいったいどこにあるのか。

「魔法の鼻を持つ犬」とともに教え子の秘密を探る理科教師。
「死んでくれない?」鳥がしゃべった言葉の謎を解く高校生。
定年を迎えた英語教師だけが知る、少女を殺害した真犯人。
殺した恋人の遺体を消し去ってくれた、正体不明の侵入者。
ターミナルケアを通じて、生まれて初めて奇跡を見た看護師。
殺人事件の真実を掴むべく、ペット探偵を尾行する女性刑事。

道尾秀介が「一冊の本」の概念を変える。

引用元:集英社

感想

短編6章
短編6章で構成される作品です。一つ一つは短編として長めな印象ですが、とはいえコンパクトにまとまっているお話なのでテンポよく読み進められます。

読む順番を読者が選ぶ
この作品の大きな特徴はもうこの一点と言ってしまっていいと思いますが、6章をどこから読んでもいいという構成です。しかも短編はそれぞれ独立しているわけではなく繋がりを持っているのです。

読者自身がどの章を何番目に読むか選択するとことになり、そのパターンは6!で720通り。そんなこと成立させられるの?と気になってしまいますよね。

本の冒頭に各章のあらすじが書かれています。それを読んでもそれぞれが独立した、しかも色々なジャンルの内容になっているように見えます。それがどう一冊として繋がるのか。しかもどの順番に読んでも?

またこういう構成であるということから、章ごとに目に見える工夫もされており、そんな斬新さも楽しいです。めったにない読書体験になることは間違いありません。

 

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
kindle unlimitedで読書生活をより楽しみませんか?対象の小説や漫画など、
200万冊以上が読み放題。
登録はこちらから↓

感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

確かに繋がった
とある章で脇役だった人物が別の章では主役級だったりと、登場人物の背景をそれぞれの賞が埋め合い、単独の章だと残る謎が他の章と組み合わせると明らかになるということですね。

順番によっては時系列順に追う形になったり、過去に遡って回想するような形になったりと、どの読み順でも成り立つというのはそういうことかと感心しました。奇数章が逆さまになってることも構成への徹底した工夫を感じます。

頭の整理がやや大変
この人物はあの章でこうだったとかを頭に入れながら章ごとの繋がりを見つけることになりますが、なかなかそれを把握するのが大変でした。

それぞれの章がそれ単独でも楽しめるお話である一方で、残る謎や他の章との繋がりをちらちらと感じさせる部分が含まれるので、ひと繋がりのお話として読むにしても単独として読むにしても、なんとなく読んでいて気が散るような感覚もありました。やはり通常の一冊の小説とは異なる独特な読書体験です。

終わり方への不安
通常の小説では積み上げてきた過程があることで結末のインパクトが生まれると思います。今作はその構成故に短編としての結末が一冊の結末にもなるのですが、どの章の結末も一冊の結末として足りうるの?というのは不安でした。

短編として単独でも成立しているのでお話の終わり方はそれぞれで見れば良いものですが、一冊の最後として見ると正直言えばやはり物足りなさを感じてしまいます。とはいえ一冊の全貌が見えたという達成感や爽快感はあり、この独特な読後感もまた、新しい読書体験だったなと感じさせるものでした。

私が読んだ順番
1.笑わない少女の死
2.名のない毒液と花
3.消えない硝子の星
4.落ちない魔球と鳥
5.飛べない雄蜂の嘘
6.眠らない刑事と犬

逆さまになっているものをまず読んで、あとは通常のページ順という感じです。

この読み順で印象的だったのは、オリアナの結末を知った上で、オリアナの過去を読むことになったことです。あんな結末になるということを知りながら、過去のお話を読むのはなんとも切ないものでした。

「消えない硝子の星」は単独でもその淡い雰囲気が好みでした。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/N

まとめ

以上、道尾秀介さんの「N」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。