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わたしを離さないで/カズオ・イシグロ <あらすじ・感想・考察>運命を受け入れる彼らを考察してみる

読書感想です。今回はカズオ・イシグロさんの「わたしを離さないで」です。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:わたしを離さないで
  • 作者 :カズオ・イシグロ
  • 出版社:早川書房(ハヤカワepi文庫)
  • 頁数 :464P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 人間の本質や生きる意味を考えたい
  • 静かに心に残る物語を好む
  • ドラマ化もされているドラマティックな物語を読みたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。

引用元:早川書房

感想

クローン人間の生活

物語は、キャシーという女性の回想を通じて進行し、彼女が幼少期を過ごした施設「ヘールシャム」での生活や、親友のルース、トミーとの関係が描かれます。

一見、彼らは普通の子供たちのように見えますが、実はとある目的のために存在しています。

日常と非日常

物語の進行とともに、彼らの運命が徐々に明らかになりっていきます。

読者は彼らの置かれた状況の過酷さを痛感します。

しかし、キャシーたちは自らの運命をなんとなく感じていながらも日常生活を淡々と過ごしていきます。

その日常と非日常が一体になった独特な雰囲気がとても印象的です。

定められた運命に向かって生きるということ

この作品を通じて人間の存在意義や倫理観、そして技術の進歩がもたらす影響について考えさせられます。

定められた運命に向かって生きるキャシーたちを見つめていると、終わりへ向かって生きているという意味では、部分的には自分も同じと思えることでもあり、自分自身の生き方を照らし合わせてみたくなりました。

じっくり向き合いたい

気付けばじっくりと時間をかけて読んでいました。

ページ数のわりに多く時間がかかったように思います。

終盤に向けて謎が明らかになっていく構成も引きつけられた要素でした。

静かな語り口で、心に深い余韻を残す物語です。

人間とは何か、命の価値とは何かを考える上で、一読の価値がある作品だと思います。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

運命を受け入れられるものなのか

キャシーたちはなぜ逃げたり抵抗したりしない?とちょっと疑問に思えますよね。

私なりにその理由を考察してみました。

1. 価値観の制限

キャシーたちは「ヘールシャム」という施設で育てられましたが、そこでは彼らが臓器提供者であることが当然のこととして教えられていました。

彼ら自身もそれに疑問を持たないように育てられました。

彼らにはヘールシャムの外の世界についての情報はほとんどなく、社会で生きていくスキルもありません。

つまり、彼らの価値観は最初から制限され、逃げるという発想自体が芽生えにくかったのかもしれません。

2. 物語全体のテーマとしての「受容」

この作品は、「受容」がテーマの一つになっているように思います。

キャシーの語り口も穏やかで、劇的な抵抗を試みようとはしません。「逃げること」よりも、「この世界で与えられた役割の中でどう生きるか」を考えていたように思えます。

人は自分の運命を変えられないことが多い中で、どうそれを受け入れ、どのように生きていくのかが本作の核心になっているように思います。

私たちと彼らは異なるのか

現実と全く異なって見えていた本作の世界観ですが、上記のように見ると私たちと全く異なるとは言い切れません。

見方によっては私も気づかない内に運命を受け入れながら生きているのかもしれません。

私たちも限られた選択肢の中で生かされているのかもしれないと思うと、キャシーたちの生き方から得られる新たな視点があるように思います。

色々なことを敢えて受け入れることで、人生を彩る選択が出来るようになるのかもしれないと私は思いました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/わたしを離さないで

まとめ

以上、カズオ・イシグロさんの「わたしを離さないで」の読書感想でした。

この作品は、派手な展開や刺激的なストーリーではなく、静かで淡々とした語り口が特徴です。物語を通じて、「人間とは何か」「生きる意味とは何か」といった根源的な問いを考えさせられます。哲学的なテーマや感情をじっくり味わいたい人におすすめです。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。