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成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈 -感想- 誰もが彼女から目が離せず、行く先を見ていたくなる

読書感想です。今回は宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」です。
2024年本屋大賞受賞作品です。その前からも数々の評価を受けていた話題作ですね。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:成瀬は天下を取りにいく
  • 作者 :宮島未奈
  • 出版社:新潮社
  • 頁数 :208P
  • 書影出典:宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社刊)

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 明るく前向きな気持ちになれる小説が読みたい
  • 「魅力的な主人公による一風変わった青春小説」に興味が湧く
  • 本屋大賞など受賞している話題の作品を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
1
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4
5

あらすじ

『中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。』

引用元:新潮社

感想

もう終わってしまった、もっと見ていたかった
というのが読んだ後にまず思ったことでした。

なんと言ってもこの作品の大きな魅力はタイトルとなっている「成瀬」という人物です。あらすじにもある通り、彼女は傍からは何の脈絡もなく見えるようなことでも、興味を持ったことはとにかく行動に移していきます。

そこで重要なのは成瀬が持つポテンシャルです。普通の人間がそれを行うとしたらまあこのくらいだろうと結果がある程度予想できてしまいますが、成瀬がそれを行う、というだけでどこまでやれるんだろう何が起こるんだろうと、気付くとわくわくと期待している自分がいます。物語の初めから成瀬の底知れぬポテンシャルを感じさせられ、あっという間に彼女から目が離せなくなるのです。

こうありたいと思っていた青春の物語
またこの成瀬を中心とした物語は、こうありたいと思っていた青春の物語、というようにも感じました。学生であろうが社会人であろうが、周りと同調しながら過ごす必要があるような煩わしさを感じている人が少なからずいると思います。成瀬のように上手に我が道を歩めたら、と憧れのようなものを抱きました。”上手に”というところがミソですね。ただの我が儘になってしまわず、嫌味なく。

魅力的な登場人物たち
成瀬が成瀬がと、注目が成瀬に偏ってしまうのはこの作品の特徴上仕方がないかもしれませんが、成瀬の周りにも良い味を出している登場人物が何人もいます。作中の大部分がその登場人物たちを通して成瀬の行く先を見届けるというような形ですが、その登場人物たちも場面に応じた良い特性を持っており、物語が成瀬一色ではなく彩られて見え、また成瀬から様々な色を引き出しています。その登場人物たちもこの作品の大きな魅力のように思います。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

成瀬の魅力
成瀬は文武両道でありながら完ぺきではないというところが非常に魅力的でした。超人っぽさとどこかにいるかもしれないという身近さを兼ね備えています。始めたことをやりきることもあれば、ある程度で見切りをつけることもある。何でも一番になれるという単純なキャラクターではないため親近感が持てます。経験を重視するような以下の成瀬の台詞に私は共感できて、成瀬から背中を押してもらえている、それでいいんだと思わせてくれているような気持ちになりました。

「これで一生『M-1グランプリに出たことがある』と言えるようになったな」
「たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。」

島崎と一体化
登場人物のうち島崎は読んでいる私と一体化して、成瀬の側にいる人物として期待する動きをしてくれているようでした。かといって特徴のない人物でもなく、西武に一緒に行くのも、漫才に前向きに取り組むのも、よく見ると成瀬の陰に隠れてちょっと変です。ただ、成瀬の邪魔をせず成瀬を活かしたい、という共通する思いにより読んでいる私と島崎で一体感を持ったように感じました。

島崎が成瀬に期待する気持ちも大いに理解できます。髪を伸ばす実験について人から言われて途中で結論を出したことには島崎と同様にえ?と期待外れな気持ちになりました。我が道を行く成瀬を見届けたいのに他人から影響を受けてやめるなんて…と。

嫌味っぽく見えないのは
成瀬が嫌味っぽく見えないのはそのように自分を過信せず周囲の人間を自然な形で尊重している姿が節々に見えるからというのもあるだろうと思います。島崎の反応に対して反省する成瀬もそうです。普段は淡々として感情が見えにくい成瀬が、島崎が引っ越すと聞いて取り乱す様子には人間味を感じられて更に好感を持てます。成瀬らしくなく早とちりでゼゼカラ解散と思い込むほど動揺していたというところは可愛らしくもあります。

恋愛っぽい展開も良い
成瀬から想像できないちょっとした恋愛っぽい展開もあったのは良い差し色だったように思います。ほんのわずかな恋模様が見られるただのちょっとしたお散歩という雰囲気、成瀬の新たな一面が垣間見れたようで微笑ましかったです。こういう形の恋愛話もあるんだなと感心さえしました。これも相手が西浦のような人物であってこそという感じで、登場人物とのバランスで生まれている魅力だと感じました。

もっと成瀬を、彼女らを見ていたいと思えるような、全体を通してキャラクター作りが秀逸な作品だなと思いました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/成瀬は天下を取りにいく

まとめ

以上、宮島未奈さんの「成瀬は天下を取りにいく」の読書感想でした。
もっと成瀬を見たいのに、と思ったら続編がありますね。そちらも近いうちに読みたいです。まずは本作を未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。