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汝、星のごとく/凪良ゆう -感想- 恋愛小説…という括りに収まらない。

読書感想です。今回は凪良ゆうさん「汝、星のごとく」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

☆2023年本屋大賞受賞作☆
第168回直木賞候補作
…などなど賞、ノミネート多数!

作品情報

  • 作品名:汝、星のごとく
  • 作者 :凪良ゆう
  • 出版社:講談社
  • 頁数 :352P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 奥深い恋愛小説を読みたい
  • 多数の評価を得ている話題の作品が読みたい
  • 自分を見つめなおすヒントがほしい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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4
5

あらすじ

『ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。』引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

恋愛小説…という括りに収まらない哲学味を感じます。

暗めの雰囲気です。嫌な出来事に直面する暗さではなく、人の内面を見つめる、価値観の違いを問う、そういった人の性質に向き合うことからくる暗さかと思います。

困難な出来事に巻き込まれながら…というような出来事主導の話ではなく、微妙な感情のずれによるすれ違いや、自ら作り出している生きづらさ、そういった人の内面を中心に展開されていく物語で、面白い視点で進んでいくなと感じました。

物語の中心になる男女2人とも良くも悪くも”良い子”で感情移入しやすく、応援したくなります。様々な価値観を持つ登場人物たちから2人に向けられる台詞には自分のことのように心に刺さるものがたくさんありました。

自分ではどうしようもないと思うような困難に直面したり、人との関わりに生きづらさを感じたり、自分を見失いかけそうなときにこの本を読むことで、自分の”生き方”を見つめなおすヒントがもらえるような気がします。

以下、内容に触れながら感想を記載します。開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

歪な親を持つ者同士の恋愛で、困難な出来事に立ち向かうみたいな話なのかなと読み進めていくとそんな単純な話ではなかったです。事実に振り回されているのではなく、自分の選択によって現実を複雑にさせているという見方は私にとっては新しい視点でした。

2人の視点が交互に描かれる構成もよかったですね。一方から見ると相手は何を考えているんだろうとか不満を感じるだけでも、もう一方から見ると誤解だったという場面もいくつかありました。もっときちんと話をすればいいだけの単純なことのように思います。ただ、優しさ故にそれが難しくなってしまう、優しさが仇となり相手を傷つけてさえいる。瞳子さんの「あなたたちは本当に良い子、でも褒めてないのよ」という台詞の深さを感じます。

心情がわかりやすく表現されているので、行動だけ見ると納得いかない部分も、そういう考え方もあるんだなと思えました。瞳子さんは暁海の父を奪ったわけですが、その強い生き方、人生観を知ると間違ったことは全くしていないのではとさえ思えてしまうほどでした。

自分の気持ちに従い自分で選択すること、それが行動に説得力を与えてくれるのかもしれません。人生は選択の連続で、選択をするということは何かを捨てることでもある。相応の覚悟が必要ということです。瞳子さんもそうですし、北里先生の行動も終始それによる説得力が大きかったと思います。暁海や櫂のように、周囲を気遣いこうあるべきと自分に言い聞かせて過ごすようなことは現実によくあります。2人の親のことのような、なかなか捨てるという選択をし難い現実も多々あります。そんな中で、自分の人生として、自分に責任を持ち、自分の気持ちに従い、自分で選択することで、自分が納得できる生き方をしてきただろうか、今しているだろうかと考えさせられました。

尚人の事件についてはどう捉えればいいのか悩みました。どうしようもない現実に叩きのめされただけの話にただ暗い気持ちになりました。尚人の最期もそうですし櫂の台詞にもあったかと思いますが、この瞬間に死ねたらいいという気持ちは少しだけ理解できました。それも自分の気持ちに従い自分で選択するということの一つなのでしょうか。それは少し違う気がします。

終盤の展開は暁海の選択へ繋がる大事な要素でこの物語には必要だったんだと受け止めました。最終盤の、間に合ってくれ…!という思いは皆抱くのではないでしょうか。ハッピーエンドとは言えませんが、ずっと周囲に流され拗れていた2人の関係が、最後、2人自身の本当の思いに従うことで願いが1つ叶ったことに少しだけ救われた気持ちにはなりました。

エピローグにおけるプロローグの回収も読後感を少し明るくしてくれる要素で良かったなと思いました。最初はどういう関係?という疑問だけでしたが、最後まで読んで全てすっきりしました。タイトルを回収する意味はあったのかしら?とは少し思いましたが、シンプルにグッときました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/汝、星のごとく

まとめ

以上、凪良ゆうさん「汝、星のごとく」の読書感想でした。
多くの評価を得ているだけあり、ただの恋愛小説ではありませんでした。

未読の方は是非手に取ってみてください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。