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蜜蜂と遠雷/恩田陸 -感想- 才能ある人物が実力を発揮するところを目にするというのは気持ちが良い

読書感想です。今回は恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」です。
第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞ダブル受賞作。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:蜜蜂と遠雷
  • 作者 :恩田陸
  • 出版社:幻冬舎(幻冬舎文庫)
  • 頁数 :(上)454P(下)508P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 音楽に関する小説を読みたい
  • 心を揺さぶられるような小説を読みたい
  • いくつも賞受賞、映画化もされた名作小説を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『俺はまだ、神に愛されているだろうか?
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、
そして音楽を描き切った青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。
第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?』

引用元:幻冬舎

感想

ピアノコンクール
本作は音楽を通じて人間の成長や葛藤、そして芸術の神秘に迫る作品です。国際ピアノコンクールを舞台となっています。若き才能たちが各々の想いを胸にコンクールに挑む姿を描き出しています。主要な登場人物たちのそれぞれの背景や考え方は、音楽と深く結びついており、多様な視点から音楽の意味に触れることになります。

音楽の可能性
この作品の中で特に印象的だったのは、音楽にはその人の生き方や思いを反映されるものとして描かれている点です。主人公たちがステージに立つたびに、その音楽から彼らの経験、喜び、苦悩を感じることになります。またその描写力が素晴らしく、作中の観客が演奏を聴いて感じることを、文章を通して私にも感じさせてくれるような臨場感を感じました。

共感を生む個性的な登場人物たち
多様な登場人物たちが競争の中で、自分自身との戦いに挑む姿が描かれます。共感できる登場人物がたくさんいて、彼らの挑戦の姿勢や作り出す音楽、音楽の流れに乗せて高まる感情に、胸を打たれます。音楽が競技のためのものである以上に、普遍的な力を持つ芸術であることを示しているようにも感じます。

挑戦と成長
この作品は、音楽が好きな人だけでなく、何かを追求することに共感を覚えるすべての人におすすめです。挑戦と成長の物語を通じて、読み手に勇気と新たな視点を与えてくれる作品です。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

聴いて感じることの再現
音楽が聞こえてくるようだとは言いませんが、この演奏を聴いたらこう感じるということは文章から伝わってきて、その心地よさや興奮は体感できたように感じます。一般観客側の私は、実際にその曲を聴いて感じることより多くのことをこの小説を通じて感じさせてもらえているのかもしれません。描かれていた曲の表現や感じ方を頭に入れたうえでその曲を聴いてみたら、同じような風景を感じたり、より共感できるでしょうか。

天才の登場への興奮
才能ある登場人物たちが実力を発揮することを目にするというのは気持ちが良いものですね。自分が全く別世界にいるから単純にそう思えるのかもしれませんが、嫉妬や妬みみたいなことを感じさせずに、ただただ応援したくなる、期待にワクワクする、そして演奏の描写に感動できます。描写力の素晴らしさやキャラクター作りのバランスの良さを感じます。

私は天才たちの中では栄伝亜夜のことを背景含めてとても応援していました。憧れの天才は、何があっても天才であってほしいという気持ちが私の中にはあります。高島明石が彼女を見るときの気持ちがわかるような気もしました。

失敗が描かれない安心感
演奏前などナーバスな時間帯の彼らの心理にドキドキすることはありつつも、演奏に入ってしまえばみんな前向きに、素晴らしい演奏をするという展開でした。誰もマイナスな感情で終わっていくことがなく、読んでいて安心感がありました。各々が様々な想いを抱えて挑戦する姿、素晴らしい演奏シーン。気持ちが良く、自分も前向きにやっていこうと思えるような物語でした。

栄伝亜夜の最後の演奏を描かれませんでしたが、粋な構成だなぁと感じました。聴いてもいないし、文章で読むことも出来ていないのに、なぜこんなに満足感があるのでしょう。

泣けた場面
高島明石が一番身近に感じられる登場人物でした(彼も私と違って才能ある人物ではあるのですが)。彼が最後に菱沼賞、奨励賞を受賞したという電話を受ける場面は、この物語の中で最も泣けました。こだわって表現した自分のカデンツァ(即興演奏)が数々の天才を差し置いて評価された。そして音楽家として自分はまだ期待されている。彼の苦悩を晴らすような展開に心から嬉しくなりました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/蜜蜂と遠雷

まとめ

以上、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。