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名探偵のままでいて/小西マサテル -感想- 認知症の安楽椅子探偵。単なるミステリー小説にとどまらない人間ドラマ。

読書感想です。今回は小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:名探偵のままでいて
  • 作者 :小西マサテル
  • 出版社:宝島社(宝島社文庫)
  • 頁数 :416P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ミステリー小説が好き
  • 心に響く小説が読みたい
  • ミステリーの魅力を知りたい、触れたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は現在、幻視や記憶障害といった症状が現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。しかし、孫娘の楓が身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻す。そんな祖父のもとへ相談を持ち込む楓だったが、やがて自らの人生に関わる重大な事件が……。古典作品が彩る安楽椅子探偵ミステリー!』

引用元:宝島社

感想

安楽椅子探偵
本作の大きな特徴は個性的な探偵役です。いわゆる安楽椅子探偵の形式になっています。小学校の元校長という探偵とは何ら関係ない経歴ですが、切れ者でミステリーの知識豊富。しかし幻視や記憶障害といった症状が現れるレビー小体型認知症を患っている。こう書くとなんだかごちゃごちゃした人物に見えますが、それぞれの要素がこの物語を彩ります。

いくつかのミステリー
主人公の小学校教師である楓が探偵役である祖父へ謎めいた様々な相談を持ち掛けるという形で物語は進んでいきます。展開される事件自体は日常の謎みたいな軽いものから重たいものまで様々です。主人公とともに、複雑に絡み合った謎を解いていく過程を楽しむことになります。事件の真相が明らかになるにつれて、物語全体に張り巡らされた伏線やヒントの巧妙さに驚かされます。

人間ドラマ
ここが本作としての魅力だと思っていますが、単なるミステリー小説にとどまらず、人間ドラマとしても非常に深いものがあります。主人公と祖父の関係性。周囲の人物との関係性。彼らが持つ背景。事件を辿りながら、人間模様についても辿っていきます。タイトルからも読み取れるような切ない雰囲気があり、その中でも前向きになれるような、全体として穏やかな空気感があります。ミステリー好きな方だけでなく、心に響く物語を求める方におすすめしたい作品です。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

ミステリーとしては軽め
最後の事件は楓と祖父の過去に繋がる重大な物でしたが、それを含めても安楽椅子探偵が語る真相はわりとふんわりしているように感じました。確固たる結論とするには情報が足りないような印象、他の可能性は本当にないのかなというものが多かったように思います。ただ納得感が全くないわけではなく、安楽椅子探偵形式ってこんな風だったかなという気がしないでもないです。ミステリーとしての面白さだけを求めると物足りなさはあるかもしれません。

最終章の事件は犯人が楓と祖父にとって因縁の相手ということで、緊張感もありましたし、それまでの章に散りばめられた伏線が回収されていく爽快感もありました。過去を知ったことによる感慨深い結末でグッときました。この作品の大半の魅力が最終章に詰まっているように私は思います。

古典作品が彩る
それぞれの謎解きも古典作品が絡んでいたり、それを思わせるような展開がありました。今作は作りこまれたミステリーというものではなく、ミステリー小説界の魅力をかいつまんで味わうような、他のミステリー作品にも触れてみたくなるような物語であったように思います。

今作として印象的だったのは「リドル・ストーリー」としての結末です。「リドル・ストーリー」の話題が出てきた時点で、最終章が変な感じで終わらないといいけどと不安になりましたが事件自体はスッキリ終わり、岩田と四季どっちなの、というそこまでの過程を含めて絶妙なポイントを残してきたなと私は感じました。すでに次作もあるようなのでその点に触れられるのか気になります。

幻視が生む憂いと希望
祖父の病症がタイトルにも繋がる本作のポイントです。祖父の調子に一喜一憂するというだけでなく、現実と幻視が交差するトリックや、祖父の内面や過去に繋がっていたりなど、様々な意味を持っていました。ただの知的な探偵というのではなく、認知症というアンバランスさを持つことによって、語られることの意味合いが異なって見えます。受け取り側の偏った視点に気付かされます。病気は病気なので後ろ向きな印象になりがちですが、それだけでなく希望が見えるような展開や、祖父にとって幻視が悪いことばかりではないという描写によって暗くなりすぎず、全体として穏やかな雰囲気で読み通すことが出来ました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/名探偵のままでいて

まとめ

以上、小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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