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魔眼の匣の殺人/今村昌弘 <あらすじ・感想・考察> 予言が引き起こす心理と殺人。気になったポイントを考察してみる。

読書感想です。今回は今村昌弘さんの「魔眼の匣の殺人」です。

『屍人荘の殺人』に続くシリーズ第2作目です。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:魔眼の匣の殺人
  • 作者 :今村昌弘
  • 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
  • 頁数 :428P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • クローズドサークルものが好き
  • 『屍人荘の殺人』が楽しめた
  • トリックや伏線を考えながら読むのが好き

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」人里離れた施設に暮らし、予言者と恐れられる老女は、その日訪ねた葉村譲と剣崎比留子ら九人に告げた。直後、彼らと外界を結ぶ唯一の橋が燃え落ちて脱出不可能に。予言通りに一人が命を落とし、さらに客の女子高生が予知能力者と判明して慄然とする葉村たち。残り48時間、死の予言は成就するのか。ミステリ界を席捲したシリーズ第2弾!

引用元:東京創元社

感想

シリーズ第2作目

『屍人荘の殺人』に続くシリーズ第2作目です。

本作は、予知能力や予言といった超常現象をテーマにしつつ、クローズドサークルという古典的なミステリー要素を巧みに組み合わせています。

この作品単独でも楽しめる内容かとは思いますが、前作の続きとして描かれる部分もあるので、前作を読んでいる方が楽しめます。

特殊な状況を活かしたミステリー

物語は、神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子が、人里離れた元研究施設「魔眼の匣」を訪れるところから始まります。

そこには、未来を予言する老女サキミが住んでおり、彼女は「二日のうちに、男女二人ずつ、四人が死ぬ」という不吉な予言を告げます。

さらに、唯一の外界との連絡手段である橋が焼け落ち、登場人物たちは閉じ込められてしまいます。

本作の魅力は、予言という非日常的な要素を取り入れながらも、論理的な謎解きを展開している点にあります。

予言が現実となる恐怖と、それに翻弄される人々の心理描写が巧みで、物語に引き込まれました。

また、終盤には意外な真相が待ち受けており、驚きと共に物語が締めくくられます。

前作『屍人荘の殺人』と比較すると、特殊な状況設定はやや控えめに感じますが、ストーリーやミステリーとしての面白さは健在です。

緻密な構造

文章は平易で、テンポも良いため、スラスラ読めます。ただし、登場人物の心理描写や事件の構造が緻密なので、細かい部分まで理解しながら読むには、じっくり読む必要があるかもしれません。

もし前作の『屍人荘の殺人』を読んでたなら、同じノリで楽しめますが、より論理的な推理要素が強まっている印象なので、ミステリー好きには満足感が増しているかと思います。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

緻密に構成された展開

予言、予知能力の存在で生まれる心理が、事件の展開やその裏にある思惑など全てに緻密に絡み合っていて完成度の高さが衝撃的でした。

設定がただ設定として浮いてしまうことなく、この設定だからこそできる物語になっているのが本当に凄いです。

「この一連の事件は普段我々が見聞きしている犯行とは明らかに異質です。サキミさんと十色さん、二人の予知能力が本物かどうかは別として、私たちがその能力を恐れる気持ちや一種の信仰心が事件を左右しているからです」

色々な伏線やただのミスリードなどが入り組んでいましたが、印象的だったポイントについて感想、考察を書きます。

王寺の動機と共犯

「男女二人ずつ、四人が死ぬ」というのが本当かどうかわからない状況で、王寺はそれを信じたことで事件を起こしました。

たまたま居合わせた王寺がなぜそこまで信じ込んだのかは分かりづらいかもしれませんが、「三つ首トンネルの呪いの当事者であった(その時一緒にいた3人全員が死亡している)」という背景があり、この状況に陥る前から呪いのような超常現象を恐れていました。

その上で、三つ首トンネルの呪いで死んだ3人の事件はサキミに予言されていたことや、十色の予知能力、臼井が予言に従って死んだように思われることなどから、どんどん精神的に追い込まれていったことは想像できますね。

朱鷺野と共犯関係を結んだ理由はイマイチぴんときませんでしたが、まとめてみるとわからなくはない気がしました。

①朱鷺野がサキミを毒殺しようとしたと思い込み、交換殺人を思い付き、朱鷺野を脅して共犯関係を結ぼうとした。

②朱鷺野は毒殺とは無関係だが、朱鷺野もまた予言を信じる人物だったので、王寺の提案を弱みとして握り、良い立場で王寺を使えることもあり、自衛のために王寺からの提案を受け入れた。

サキミと岡町
4人の死自体よりも、そのトリックが明らかになった後の最終盤が個人的には最も気持ちが高まりました。

事件の犯人がわかって落ち着くと思った直後に黒幕登場、とシンプルにアツい展開ですよね。

サキミに何か謎があることは感じながらも、真相は衝撃的でした。殺し合いを誘発していたことは黒幕らしい行動ですが、彼女の背景を知ると責めきれない複雑な気持ちになります。

そこにも予言能力の存在が必要な形で絡んでいて、緻密に物語が作り込まれていることに圧倒されます。

「あなたが手を下したのでは単なる殺人になってしまう。それでは駄目だ。あなたはサキミに想い人を奪われ、サキミの身代わりとして置き去りにされ、サキミの予言に囚われた人生を送ったというのに、その間にサキミ本人は予言者という過去を捨てて幸せな家庭を築いた。だからこそあなたはサキミ自身の予言によってサキミの幸せを破壊したかった!予言したことを後悔させたかった!特別な力を持って生まれたサキミの人生を根こそぎ否定したかった!」

葉村ではなく剣崎比留子が偽装自殺する必然性

最終盤のもう一つの重大なポイントですね。比留子は十色を殺した犯人を攻撃するため、そして葉村を守るために、計算して自分が偽装自殺することにしました。

比留子が偽装自殺することで、交換殺人を行っている場合に、共犯の2人が争いが起きる、というのは小説内の説明で理解できます。

それが葉村を守るため、そして犯人が死ぬかもしれない選択である、というところへどう結び付くのかが少しわかりづらかったかもしれません。

十色が殺される前、男性(臼井)のみが死んでおり、予言どおりならあと被害にあうのは男性1人、女性2人という状況。そこで十色が殺され、その後比留子は偽装自殺をします。

偽装自殺するタイミングでは、犯人は共犯であろうということまでわかっていました。犯人は予言のことを信じていることが前提となります(でなければ殺人を犯す理由がない)。

男女の組み合わせは比留子から説明があったとおりで、男性2人は十色を殺す理由がないから無し。女性2人の場合は比留子が自殺したことでこれ以上殺人を起こす理由は無くなる。男女の場合、あと男性1人を殺す必要がある。

時計の針の状態から王寺が十色殺しの犯人であること、さらに朱鷺野が共犯者であり、交換殺人を行っていることが導かれましたが、それが分かったのは偽装自殺をした後です。

偽装自殺したタイミングでは、女性2人のパターンも消えたわけではなく、男女だった場合でも交換殺人ではない可能性もありました。

考えうるパターンの中で、犯人に争いが起きることでどちらかが死ぬかもしれないという、葉村に被害が及ぶ可能性をわずかに減らす選択だったということでしょうか?

たしかに比留子が偽装自殺する場合でのみ、特定のケースで犯人を陥れ葉村が被害にあう可能性を減らしますが、偽装自殺したタイミングから考えると、比留子自身や葉村が思うほど、誰かを攻めるとか守るとかの状況には至っていなかったように思えます。

ということでたまたま犯人に刺さるパターンだったため重い選択だったように見えるだけな気もして、この点はイマイチしっくりきていませんが、私が何か思い違いをしているに違いありません。どこが間違っているかコメントで教えてもらえたら嬉しいです。

論理は一旦置いておいたとしても、比留子の選択にも予言に対する心理が関係しており、また比留子の人間味を感じさせる内容で、これもまた構成の緻密さやキャラクターの魅力を感じさせる印象的な要素でした。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/魔眼の匣の殺人

まとめ

以上、今村昌弘さんの「魔眼の匣の殺人」の読書感想でした。

閉ざされた空間、謎めいた出来事、そして論理的な謎解きの快感――。前作に続き、特殊な設定を活かしつつ、本格ミステリーの醍醐味を存分に味わえる一冊でした。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。