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教団X/中村文則 -感想- その思想は世界を揺るがす。

読書感想です。今回は中村文則さんの「教団X」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:教団X
  • 作者 :中村文則
  • 出版社:集英社(集英社文庫)
  • 頁数 :608P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 宗教、哲学、物理に関心が持てる
  • 一般的とは言えない独特な思想に触れてみたい
  • テレビ番組でも紹介された傑作小説を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
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4
5

あらすじ

『突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国の根幹を揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、そして光とは何か。』

引用元:集英社

感想

要素が盛りだくさん
性質の異なる二つの宗教団体が中心に描かれる物語です。それぞれの教義や背景が主に描かれるのですが、宗教、哲学、物理、…と様々なテーマが登場し、かなり盛りだくさんの内容になっています。

印象の多様さ
盛りだくさんが故に、それらをどう受け取るかでこの小説の印象が異なってくると思います。出てくる思想に興味を持てるか、物語の展開に重きを置くか、登場人物への共感を求めるか、そういった小説への向き合い方によっても印象が変わりそうです。要するに、多様な面を持った小説であるというように私は感じました。

劇的な展開
私は様々な思想に触れることがこの小説の肝だと思っていますが、ハラハラドキドキするようなエンタメ性もあります。ボリュームがあり、またテーマがテーマなために胃もたれしそうにも思うかもしれませんが、興味深い思想と物語の展開とのバランスによって意外とさらっと読み進められます。

共感しながら読むものではない
登場人物に感情移入しながら読む小説ではなくあくまで客観的に読む小説だと思います。というのも感情移入できる登場人物がほぼおらず、そもそもそうさせるつもりもなくただ一般的とは言えない様々な思考が表現されており、それに触れることで自分がどう思うかを考えるための小説だと私は受け取りました。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

盛りだくさん過ぎる
それぞれの教祖の語りや思想が大部分を占めていましたが、難解という感じではなく私としては部分部分で興味深いポイントも多くあったものの、ちょっとくどく説教くさく感じてしまいました。そのうちだんだんと右から左へ流れていくだけになってしまって結局何が言いたかったのか考えがまとまらなくなってしまいました。

面白いなと思った考え方の箇所を引用します。ただこれが物語に何の関係が?と理解できずにいます。

『意識「私」によって、脳に何らかの因果作用を働きかけることはできない。』

『人間が、精神の分野において神を超越している』

性描写が多すぎる
沢渡の方、いわゆる教団Xの方ですが、性描写が多くて気が散ります。沢渡は異常な性質を持ち合わせていて、かつ謎のカリスマ性によりあの空間が生まれたということかと思いますが、ミステリアスでありながらどこかチープさを感じました。

自ら神を騙り、自分への罰も自分で演出するという究極の自己中な思考には圧倒されました。その点では沢渡は面白い人物ではあったものの、性質が性質なだけになんとなく安っぽくも見えてしまうようにも思いました。神を騙りながら、実は誰よりも人間らしくあるというようなことでしょうか。

世界を巻き込む
こんなに話が大きくなるとは思わず、非現実的だとは思いつつもかなりワクワクしました。あれが世界に発信されたとして世間はどう受け取るでしょうか?本当に世界に影響を与えられるんですかね?この小説のテーマからは外れるものと理解はしつつも、それに対する世間の反応みたいなことももっと見てみたかったです。私だったら怪しい宗教団体というだけで真に受けられないような気がします。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/教団X

まとめ

以上、中村文則さんの「教団X」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。