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告白/湊かなえ <あらすじ・感想・考察> 「復讐」という行為がどこまで正当化されるのか

読書感想です。今回は湊かなえさんの「告白」です。

第6回本屋大賞受賞作品です。映画化もされている有名作品ですね。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:告白
  • 作者 :湊かなえ
  • 出版社:双葉社(双葉文庫)
  • 頁数 :320P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ミステリーやサスペンスが好き

  • 静かにゾッとするような作品を読みたい

  • 考えさせられる読書体験がしたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人の家族」「犯人」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラー。

引用元:双葉社

感想

娘を殺した生徒たちへの復讐

教師である森口悠子が、自分の娘を殺した生徒たちに向けて語り出す衝撃的な独白から始まる物語です。

事件をめぐる重たいテーマを扱っているのに、語り口は驚くほど冷静で淡々としていて、そのギャップがかえって不気味なほど印象に残ります。

変わった構成で進むミステリー

構成は章ごとに語り手が変わる形で進み、それぞれの人物の視点から事件の真相が徐々に浮かび上がってきます。

登場人物たちの内に秘めた思いや過去が、語りという形で浮かび上がるたびに、それまで見えていた世界がぐらりと揺らぐような感覚を覚えます。

誰が正しくて誰が悪いのか、その境界線はあいまいになり、何を信じ、どこに心を寄せるべきか戸惑うことになります。

そうした中で「復讐」という行為がどこまで正当化されるのかという問いは、読者自身にも突きつけられています。

読みやすいけど、読後にずしんとくる

文章そのものは難しくなく、文体も比較的平易です。

心理描写がリアルで生々しいので、感情的に引き込まれやすいですが、逆にちょっと疲れる人もいるかもしれません。

物語としてはコンパクトで、展開もテンポよく進むので、読書に慣れてない人でもサクッと読めると思います。

内容の重さに比べて、物理的には軽めの一冊です。


以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

ミステリーとしては変わった構成

いわゆる「探偵が事件を解決する」とか「謎を追っていく」タイプのミステリーとは違う構成でした。

特徴的なのは、「章ごとに語り手が変わる一人称形式」で、それぞれの“告白”が少しずつ物語の全体像を見せていくところです。誰かが真相を解き明かすのではなく、登場人物の内面がじわじわ明らかになることで、読んでいくうちに真実に近づいていく感覚になります。

この構成によって、同じ出来事でも語り手によって全然印象が変わって見えるので、「真実は何なんだろう?」とすごく考えさせられ、感情を揺さぶられます。読み終えたあとも答えが出ないような、でも妙に納得してしまうような、不思議な読後感が残ります。

衝撃のラスト

結末は残酷でしたが、でもどこかで「よくやった」と思ってしまった自分がいました。

読み終えたあと、その感情にちょっと戸惑いますが、これこそが『告白』の怖さであり魅力なんだと思います。

「ああ、やっちゃったな…でも分かる…」っていう、理性と感情のギリギリのところを突いてくる感じです。

善悪だけでは割り切れない感情が心に残ります。

語り手と読者の感情のズレ

直樹には若干同情しますが、修哉に関しては行動からも語りからも同情出来ない不穏さが常にありました。

修哉の語りは、いじめを打開する様子など「前に進んだ」ように語られますが、渡辺の言葉や態度にはどこか「自分の物語に酔ってる」ような雰囲気があり、違和感がぬぐえません。

この“語り手は前向きだけど読者はモヤモヤする”というズレこそ、この作品の怖さであり巧みさだと感じます。

それぞれの語り手に“正当性”を持たせてるからこそ、逆に読んでいる側は「それでいいのか?」と考えさせられます。

簡単に解説

中学校教師・森口悠子は、終業式の日にクラスの生徒たちに、娘・愛美が学校で命を落とした事件の真相を語り始める。警察は事故と判断したが、森口は犯人がクラスの男子生徒である渡辺修哉と下村直樹であると突き止めていた。

修哉は、自作装置の実験として、愛美にそれを触らせて感電させた。直樹は感電した愛美をプールへ落とした。愛美の死因は溺死。森口は、警察に訴える代わりに、彼らが飲んだ牛乳の中にHIV感染者の血液を混ぜたと告げて、教師を辞職する。

そこから物語は章ごとに語り手を変え、修哉・直樹・直樹の母・美月(修哉、直樹の同級生)らの視点で進んでいく。

直樹は愛美が感電により気絶しただけと知りながらプールへ落としていた。自ら愛美に手を下したこと、また牛乳の件などにより精神が不安定になり、最終的には自分の行いを母親に自白する。母親は息子が精神異常の犯罪者となったことに耐えられず、息子を殺し、自分も死ぬことを決意。対峙した結果、直樹は母を殺害してしまう。

一方、修哉は、幼少期から実母に認められたいという強い思いを持っており、装置を作ることで自分の存在をアピールしていた。愛美の事件後、実母がすでに別の家庭を築いていることを知り、自分の存在を認めてくれなかった母親への承認欲求を拗らせ、学校に爆弾でを仕掛け自爆する計画を実行する。しかしその後、森口から最後の“告白”が届く――爆弾は森口の手で実母がいる研究室に移されており、その爆弾を修哉は起動させたというものだった。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/告白

まとめ

以上、湊かなえさんの「告白」の読書感想でした。

湊かなえさんのデビュー作でありながら、完成度が非常に高く、人間の心理に深く切り込んでいる点が本作の魅力です。自分の中の価値観も少しずつ揺さぶられるような、そんな一冊でした。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。