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インシテミル/米澤穂信 -感想- こういうミステリが好きだったという思いにひたすら「淫してみる」

読書感想です。今回は米澤穂信さんの「インシテミル」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:インシテミル
  • 作者 :米澤穂信
  • 出版社:文藝春秋(文春文庫)
  • 頁数 :528P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ミステリーが好き
  • クローズドサークル系のミステリーが読みたい
  • 映画化もされている有名作品を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
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あらすじ

『ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給11万2000円がもらえるという破格の仕事に応募した12人の男女。とある施設に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕する。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった——。いま注目の俊英が放つ新感覚ミステリー登場。』

引用元:文藝春秋

感想

クローズドサークル
12人の男女が高額報酬を得るために「7日間の監視実験」に参加するところから物語が展開されます。しかし、閉ざされた環境での心理戦。参加者たちは極限状態に追い込まれていきます。

巧みな構成力
物語の展開が早く、ぐいぐいと引き込まれていきます。登場人物たちが徐々に疑心暗鬼に陥り、信頼関係が崩れていく様子は、現実の社会でも似た状況が起こり得ると思わせるリアリティがあります。彼らがどのように決断し、どのように行動していくのかを見守ることで、読んでいる私も自分がその場にいたらどうするかを考えてしまいます。

キャラクターが良い
一人一人の登場人物が持つ個性や心理描写が丁寧に描かれています。私はクローズドサークル系のミステリーは特に登場人物たちのバランスが重要なように感じています。その点で本作は絶妙で、必要十分なバリエーション、かつ愛着が持てる登場人物たちであったように思います。

ミステリー好きによるミステリー
本作が他の作品との差別化されるポイントがここであると思っています。どういうことかは読んでみてからというところですが、どっぷりミステリーに浸かっている方向けというよりはカジュアル寄り、謎解きというよりは心理ゲームみたいな楽しみ方になるかなと私は思いました。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

タイトルの意味
米澤穂信さんは「自分なりにとことんミステリを追究した」作品と語っており、こういうミステリが好きだったという思いにひたすら「淫してみる」という意味を込めて題したそうです。

淫する→度が過ぎる。ふける。おぼれる。


展開は良い…だからこそ
出来事の展開としては緊張感があり、ワクワクしました。登場人物たちの個性もそれぞれで立っていてこの人必要だった?みたいな印象の人物もいないくらい洗練されていたように思います。

特に印象的だったのは若菜のヒステリックさです。釜瀬を殺すところまで至るのは清々しくさえありました。そして被害者が釜瀬であるところもまた絶妙で、同情しきれずにやっぱりか…みたいにも思えてしまいます。結城たちも感じていたようにこんな状況を段々とどこか冷ややかに見てしまっている自分がいることに気付きます。

安東が探偵役のように目立っていながら案外無能というのも面白い役割だなと思いました。そしてそれを利用する真犯人という構成も、抜かりないなという印象です。そのように出来事の構成としてはとても緻密で面白かったのですが…

背景が物足りない
動機や登場人物が抱える背景がほとんど明かされなかったところが私は物足りなく感じてしまいました。背景に何かがあるという思わせぶりな描写もあったように思いますが、最後にも表面をさらっと触れるだけだったりして、この実験の展開が面白くて背景にも期待してしまったこともあり、不完全燃焼感がありました。

真犯人が持つ背景
関水が10億円必要だった理由も明確にはなりませんでした。きっちり10億円を目指していたことや、何人もに影響を与えてしまうという発言、そもそも初めからこの実験の中心人物だったらしいことなどから、そこの理由は知りたかったなと思ってしまいます。

主催者の意図
クローズドサークルミステリーを起こしたかったというだけなのか、裏の世界のエンタメみたいなことなのか、結局黒幕が何なのか、何が目的なのかわかりませんでした。須和名が最後に主催者に少し触れていましたが、須和名自身の謎を増やしただけでした。

須和名の謎
須和名も謎めいたヒロインとして目立っていながら、結局実験自体ではほとんど活躍はなく、ただ傍観者であり続けました。描かれたことから考察できるのは、須和名も主催者の立場に近い存在であることくらいです。ただ関水やその他参加者がそれを知っていたようには見えず被害にあった可能性はなかったのでしょうか。自分への被害は起き得ないというのような振る舞いには理由があったのでしょうか。

続編があるのかなと思うような謎だらけの結末に私は感じました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/インシテミル

まとめ

以上、米澤穂信さんの「インシテミル」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。