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法廷遊戯/五十嵐律人 -感想- 法の世界で行われる「遊び」としての戦略や心理戦

読書感想です。今回は五十嵐律人さんの「法廷遊戯」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:法廷遊戯
  • 作者 :五十嵐律人
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :464P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ミステリー小説、法廷ドラマが好き
  • 頭脳戦が好き
  • ドラマ化もされた有名作品を読みたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『法律家を目指す学生・久我清義と織本美鈴。
ある日を境に、二人の「過去」を知る何者かによる嫌がらせが相次ぐ。
これは復讐なのか。
秀才の同級生・結城馨の助言で事件は解決すると思いきや、予想外の「死」が訪れる――。
ミステリー界の話題をさらった、第62回メフィスト賞受賞作。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

法律とミステリー
ロースクールに通う学生たちが物語の主役です。学生たちの間で法律を学ぶ者たちならではのゲーム『無辜ゲーム』が行われます。特殊な性質を持つゲームに初めはワクワクしますが、徐々にそのゲームが持つ力や、隠された謎が積み重なって不穏な空気が広がっていきます。そしてとある事件に発展していきます。

法廷シーンの迫力
この作品の魅力の一つは、リアルに描かれる法廷のシーンです。実際の裁判の流れや法律の知識が巧みに盛り込まれており、法律に特別興味を持っていなかった私にとっても非常に興味深い内容でした。特に、法的な議論が緻密に展開され、そのロジックを追わせることで、頭脳戦としての読み応えがあります。

無駄のない構成で油断できない
この物語が単なる法廷劇で終わらないのは、作中に散りばめられた「遊戯」というテーマです。法の世界で行われる「遊び」としての戦略や心理戦が強調され、何が真実で何が虚構なのかを絶えず考えさせられます。物語の後半になるにつれて、予想を覆す展開が続き、最後まで目が離せない展開が待っています。

物語のテンポも良く、法学的知識に加えて心理的な要素も絡み合い、多層的な楽しさがあります。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

論理的な進行が心地良い
気になるところは多少あれど、大筋として語られることが論理的、合理的で納得感を持ちながら読み進められるのが心地良かったです。事件の構成としてはやや複雑さがありましたが、法律の考え方などが読み進める中で自然と頭に入ってくることで、誰がどういう立場にいるというのが分かりやすく感じました。

散りばめられた伏線が後半で全て繋がっていくような緻密な構成も相まって、目的地まで確かに繋がっていると思える道を歩いているような安心感もありました。

アニメのような登場人物たち
清義はまさにアニメや漫画の主人公というイメージ。最後の判断には様々意見がありそうですね。『罪を認めて、罰を受け入れる道』、『罰を拒否して、罪と向き合う道』。私としてはちょっとセイギは物語に浸りすぎで、立場的には美鈴の考えの方が自然なのではと思ってしまいましたが、主人公らしくはあります。

美鈴については不遇な立場であったことはあるもののあまり共感ができませんでした。結局美鈴が殺したということは驚きではあったものの、清義との関係に縛られすぎているように見えます。考え方は自己中心的でまるきり悪役なのでそういう意味では間違った印象ではなく、作中だと比較的人間味のあるキャラクターなのかもしれません。

馨は存在が際立ちすぎて黒幕だと気付きやすかったですが、ポイントはwhoやhowではなくwhyであり、彼が持つ背景には共感できます。真相を知っていくことで正義と悪が入り混じり、清義と美鈴↔馨の立場が逆転するような複雑な関係性が生まれて面白かったです。

馨と美鈴の映像シーンが泣けた
馨の動機が明らかになる映像シーンは泣けました。父の冤罪を知っていること、それを父が生きている間には自分にはどうにもできなかったこと、自分の命を懸けて父の冤罪の立証、国や加害者への同害報復を果たすこと、すべてに共感できるし、考え方にも筋を通しつつ思いの強さが感じられてぐっときました。

現実でも最近、死刑判決に対する再審請求審が行われその判決が話題になっています。この作品の中で描かれた冤罪の問題や法律の知識はこの物語だけの話では決してありません。現実のニュースにもこれまでになかった視点で関心を持てるかもしれません。

3行でネタバレ

続きを読む ※ネタバレ注意
ロースクールに通う久我清義と織本美鈴に対する嫌がらせが起きる。秀才である結城馨の協力も受けながら犯人探しを行う。
馨が殺害される。その場にいた美鈴が犯人とされるも無罪を主張。美鈴と清義は過去に馨の父に対して痴漢詐欺を行い、それを起因として馨の父が自殺したことが発覚。
全てはその復讐及び冤罪立証のための馨の計画であったと判明。最終目的は自身は生き残り父の再審請求をすることであったが、美鈴が口封じのために馨を殺害していた。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/法廷遊戯

まとめ

以上、五十嵐律人さんの「法廷遊戯」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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