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羊と鋼の森/宮下奈都 <あらすじ・感想・考察> 「ピアノの調律」を通して物事への向き合い方を考える

読書感想です。今回は宮下奈都さんの「羊と鋼の森」です。

2016年、第13回本屋大賞受賞作で、映画化などもされている人気作品です。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:羊と鋼の森
  • 作者 :宮下奈都
  • 出版社:文藝春秋(文春文庫)
  • 頁数 :288P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 仕事や職人の世界に興味がある
  • 音楽やピアノが好き
  • 静かで温かい物語を求めている

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『ゆるされている。世界と調和している。
それがどんなに素晴らしいことか。
言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。

「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」

ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

引用元:文春文庫

感想

ピアノの調律

ピアノ調律師として成長していく青年の姿を描いた静かで美しい物語です。

高校時代、ある出会いをきっかけに「ピアノの調律」という世界に魅了された主人公の外村。音を整えるという仕事の奥深さに触れながら、少しずつ技術を学び、自分なりの道を探していきます。

調律の技術的なことや調律師の考え方が興味深くて、ピアノの中身を覗いてみたくなったり、調律師の仕事を実際見てみたくなったり、ピアノを弾いてみたくなります。

静かで繊細な空気感

この物語からは、静かに積み重なっていく時間に美しさを感じます。

外村が少しずつ成長し、調律という仕事を通して自分自身を見つめ直していく様子は、どんな職業にも通じる「仕事への向き合い方」を教えてくれます。

人と音、経験と感性が交わりながら生まれる調律の世界。その繊細な空気感を、穏やかな文章で描いています。

派手な展開はなく、テンポの速い展開や刺激的なストーリーを求める人には、ちょっと物足りなく感じるかもしれません。

ゆっくりした気分で読めるときに手に取ると、心にしみる物語として楽しめると思います。 

じっくり読みたい

ボリューム的にはそれほど長くはありません。

読みやすさとしては、難しい言葉はあまりなく、全体的にシンプルな文体なので、スラスラ読めます。

ただ、じっくり噛みしめたくなる表現が多いので、一気に読むというよりは、少しずつ味わいながら読むのが向いているように思います。

淡々とした印象を受ける人もいるかもしれませんが、ゆったりした作品が好きなら、心に響くと思います。

 

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

積み重ねが変化を生む

外村個人の調律師としての技術や精神的な成長だけでなく、それに伴う周囲の変化が見られることが印象的でした。

外村は周囲の人間に恵まれているように見えますが、それも外村の調律へ向き合う姿勢が生んでいるようにも感じられます。

例えば、秋野は外村に対して初めはツンツン嫌味っぽく接しますが、外村の様子を見ているうちに認めるようになっていきました。

そのように努力や物事に向き合う姿勢が、ただ個人の成長だけでなく、周囲の環境との相乗効果を生むという一面に希望を感じました。

佐倉姉妹について

外村のお客さんである双子の佐倉姉妹ですが、由仁はかなり悲劇的な展開だったはずなのに軽く扱われている印象でした。

まだ将来が定まっていたわけでもなく、調律師の道へ切り替えることもメンタル的に可能な段階だったということでしょうか。

前向きな性格というのもあったとは思いますが、由仁の扱いに少しモヤっとしました。

柳の結婚披露パーティーで外村が調律するピアノを、覚醒した和音が弾くというのはグッとくる展開ではありましたが、個人的にはその点で純粋に感動できませんでした。

仕事や趣味への向き合い方

仕事でも趣味でも、単に上手くなることだけがゴールではなく、「どう向き合い、どう感じるか」が大切なのかもしれないと気付かされました。

外村はたまたま高校時代に調律という世界に出会って、それに魅了されて進んでいきますが、現実ではそんな風に「これだ!」って思えるものに出会うのは、そう簡単ではありません。

しかし、外村も最初から確信を持っていたわけではなく、調律の奥深さを知るうちにどんどんのめり込んでいきます。

「何かに真剣に向き合えるかどうか」というのは、もともと才能や運で決まるものではなく、「向き合ううちに、だんだん本気になっていくもの」なのかもしれません。

結局、自分がどこまで続けるか、どう向き合うかというのは、その時々の気持ち次第です。

結局、向き合い方に正解はなく、何を選んでもその時の自分にとっては間違いではない。

そう思えたら、気楽にいろんなことに挑戦できるような気がしました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/羊と鋼の森

まとめ

以上、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」の読書感想でした。

自分自身の仕事や趣味に対しても、もっと深く向き合ってみたいと思いました。ただやるのではなく、その先にある「本当の音」を見つけるような気持ちで取り組めば、見える世界が変わるかもしれません。そんな静かで力強い余韻が残る一冊でした。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。