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向日葵の咲かない夏/道尾秀介 -感想- 何が見えている?爽やか…ではないゾクゾクするような夏休み。

読書感想です。今回は道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:向日葵の咲かない夏
  • 作者 :道尾秀介
  • 出版社:新潮社(新潮文庫)
  • 頁数 :470P
  • 書影出典:道尾秀介『向日葵の咲かない夏』(新潮文庫刊)

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ホラーっぽいミステリーが読みたい
  • ゾクゾクするような小説が読みたい
  • 多くの評価を受けている有名小説が読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
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4
5

あらすじ

『夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。』

引用元:新潮社

感想

タイトルの印象と異なるミステリー
ぱっと見、爽やかな夏の物語を想像するようなタイトルとカバーですが、内容はその印象とは異なりホラーっぽいミステリーになっています。読後にこのタイトルとカバーを改めて見ると印象がまるで異なって見えるのは面白いところです。

人を選ぶかもしれない
ネタバレなしには表現できませんがかなり個性的な内容で、その個性が大きな魅力ではあるのですが、やや取っつきにくさもあるかもしれません。また、子どもや動物が虐げられる描写があるので、そういうものを受け付けない方は読むのが苦しいかもしれません。

個性が際立っている
ただ、その辺りも含めミステリー小説として個性が際立った非常に面白い作品になっています。ミステリー好きな方は見逃せない小説であることに間違いないと思います。スッキリするようなモヤモヤするような独特な読後の余韻が印象的でした。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

スッキリ且つモヤモヤ
トリックや設定も最後には全て明らかになり内容の理解という意味ではとてもスッキリしますが、その真相や結末が不気味すぎてモヤモヤするという複雑な読後感です。私としては充実感が大きくとても面白い作品ではありましたが、クセが強くて万人に薦められるものではない気がしました。

主要キャラクターまとめ・解説
S君死亡の話の流れとしてはそんなに複雑ではなく時系列としては以下のような感じです。

①S君と古瀬泰造が偶然出会う。犬猫殺害→足の骨折り。
②ミチオがS君へ自殺を唆す。
③S君は古瀬への最後の贈り物として自殺。
④ミチオが遺体発見。
⑤古瀬がS君の遺体を隠す。
⑥ダイキチがS君の遺体発見。

この小説の肝はこの事件の流れではなく、それぞれの登場キャラクターに関する真相が最後に全て明らかになるところかと思います。要は多くのキャラクターがミチオの妄想だったというところです。ということで主要な登場キャラクターがそれぞれ何者だったのか、まとめてみたいと思います。

ミチオ
主役、この物語を作った人物。初めから闇を感じさせる描写がちらほら。結局上に書いた出来事を基に彼が妄想でこの小説の物語を作ったという感じですね。

ミカの事件によって狂ってしまった人物の一人。最後、物語を終わらせるとして焼身自殺を図るわけですが、結局自分だけ生き残ります。今日で10歳になるって知ってた?という両親とのやり取りには、親からもっと愛されたかったという気持ちが見えて苦しくなりました。

そして小説最初の数ページの状況に至ります。ミカ(トカゲ)が死んだことで、彼は物語から抜け出すことができるのでしょうか。

ミカ
この物語の中では3つのミカがいました。
・トカゲ(ミチオの妄想)
・人形(母親の妄想)
・生まれる前に死んだ赤ちゃん

3歳とされながら見合わない言動に違和感がありましたが、全てミチオの妄想だとすれば納得です。ミチオと母親でミカと呼んでいる対象が異なっているのは驚きの一つでした。例えば序盤にミチオと母親で、以下のようなやりとりがありました。真相が明らかになってから見ると意味が異なって見えますね。
「ミカって呼ぶんじゃないよ!」
「ミカをミカって呼んで、何がいけないの?お母さんだって、呼んでるじゃないか」

母親
ミチオの嘘で起きた事故によって狂った人物。人形をミカとして扱っていることが終盤に判明する。真相が明らかになるまでは嫌な親という印象でしたが、実際は可哀想な人物でした。

ミチオの焼身自殺に巻き込まれ死亡。ミチオの妄想で何に転生したかは明らかになっていないが、カマキリのようだという描写がありました。

父親
特徴がない人物。彼の状況には同情します。

ミチオの焼身自殺に巻き込まれ死亡。ミチオの妄想で何に転生したかは明らかになっていないが、カメのようだという描写がありました。

S君
犬猫殺害の犯人。古瀬泰造へ死骸の提供をしていた。古瀬への最後の贈り物として自殺。

作中で蜘蛛に転生したとされて会話をしていたのは全てミチオの妄想。蜘蛛のS君の最期のシーンはミチオの狂気が前面に出てきていました。その死骸をミカに食べさせるというところは、その時点ではミカが何者か判明しきっていないので恐怖でしたが、真相を知るとただトカゲに食べさせたというだけでした。

古瀬泰造
現実の人間。動物の足の骨を折ることに執心。途中までは真相への鍵を握る重要人物という感じでミチオの視点と交互に古瀬の視点が描かれましたが、予想とは違う鍵の握り方でした。この人物の思考は理解不能。

保身のためにS君の死体を隠す。そのタイミングがミチオが発見した直後になったのは偶然。ミチオにより殺される。ミチオにより全ての犯人として仕立て上げられ自殺と扱われる。その後ミチオの妄想ではカマドウマに転生。

岩村先生
小児性愛。S君死亡の事件には無関係で、S君のビデオが家にあったのは偶然。この物語とは関係ない別の犯罪者。ミチオが岩村先生の家に乗り込むところは緊張感が凄かったですね。連れていたミカがトカゲだと知って読むと状況もまた変わって見えます。

トコお婆さん
製麺所のお婆さん。お婆さんは既に亡くなっており、ミチオらがやり取りしていたのはミチオや製麺所のおじさんの妄想の中でお婆さんが転生した猫。

スミダ
一年前に交通事故で死亡。古瀬がその現場に居合わせる。ミチオの妄想では学校の後ろの席に生けてある百合の花に転生。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/向日葵の咲かない夏

まとめ

以上、道尾秀介さんの「向日葵の咲かない夏」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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