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方舟/夕木春央 -感想- 驚愕の結末!死ぬべきなのは誰か?クローズドサークルの傑作

読書感想です。今回は夕木春央さんの「方舟」です。
多くの評価を得ている傑作ミステリー小説です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:方舟
  • 作者 :夕木春央
  • 出版社:講談社
  • 頁数 :304P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • クローズドサークルミステリーが好き
  • 驚愕のどんでん返しを体感したい
  • 多くの評価を得ている話題作を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

特徴的な舞台設定
クローズドサークル系のミステリーです。特殊な地下空間を探索するという場面から始まります。心霊スポットを訪れるような冒険心がくすぐられてワクワクし、苦しくなるほどその閉鎖的な雰囲気が感じられます。徐々に明らかになるこの地下空間の作りが物語の肝となっていきます。私は閉所に恐怖を感じるのでなかなか苦手な体験でした。

次々と事態が動き出していく
不慮の出来事によりその空間に閉じ込められる登場人物たち。脱出のため検討をしなければならない状況のなか、何故か起きる殺人事件。次々と展開していく物語にあっという間に惹き込まれてしまいます。

特殊な捜査進行
その空間から脱出しなければならないという状況により、事件の捜査が変わった形で進行していきます。この状況だとこうなるのかと物語の進み方に目新しさを感じました。謎解きとしてだけでなく物語も面白くさせているような考えられた設定だと感心しました。

驚愕の結末
この作品が注目を集めた要因はのはやはりその結末にあります。もちろんここには結末に関わることを何も書くことができませんが、私はその結末に震え上がってしまいました。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

イヤミス
読んだ後の印象としてはエピローグの逆転劇(犯人からすれば計画通りですが)がすごい!という爽快感が強かったです。ただ、最後の一文から想像してしまう悲劇にじわじわと絶望を感じました。

『数瞬後。五人の、絶望の絶叫が遠く聞こえた。』

運命の選択
柊一は麻衣がいよいよ岩を落としに行くというタイミングで麻衣と一緒に地下に残る選択が頭をよぎっていました。その選択が分かれる文章の境目がとても印象的でした。このたった一文による分岐で生死を分けたと思うとゾクゾクします。

とはいえ、もし麻衣のもとへ行く選択をしていたとしても、その後真っ当な未来は待っていないでしょうね。

ノアの方舟
タイトルが「方舟」であるように、「ノアの方舟」をイメージさせる点がいくつかありました。

「ノアの方舟」は旧約聖書に登場する物語です。ざっくり書くと、神が人類の堕落を見て地上の生き物を大洪水で一掃することとするが、ノアにのみ啓示を与え方舟を作らせ(家族とすべての動物のつがいと共に)生き延びさせた、という感じです。

ノアの方舟は三階建てとされており、この物語の地下空間も地下三階の方舟のような形でした。

水による被害というのも共通しています。

また神の啓示を受けた唯一の人物もいました。それは、誰よりも先に監視カメラのモニターに気が付き行動を選択することができた、ということを指しています。

『僕らの中でただ一人、麻衣は啓示を受けていた。』

そして、それ以外の登場人物は全滅することになります。

脱出手段と犯人探し
脱出するための犠牲を犯人に担ってもらう必要がある、という状況の歪さがとても興味深かったです。その点は矢崎さんが岩を落としかけたときの柊一と麻衣の会話が特に印象的でした。犯人が犠牲になることが”正しい”のか、愛されている人と愛されていない人で命の価値の違いがあるのか。面白い視点でした。

ただしエピローグを読むと麻衣の言葉も全く違って見えます。そういう状況であることを信じさせるための会話だったのでしょうか。本当に天地がひっくり返るような結末ですね。

謎解きと麻衣の異常性の見方
良くも悪くも結末ありきで物語が展開しているように見えます。翔太郎の推理もわりとシンプルでさらっと進んでいき、エピローグに入るまでは拍子抜けした感覚でした。ただ、犯人の計画通りに進んだという話であるためそのように見えるのは当然です。エピローグを読んでからは中盤の印象も違って見えます。

登場人物一人一人への深堀はほぼありませんでした。一人が犠牲になる必要があるという空間をイメージしづらかったりもします。注目すべきはそこではないためあえてシンプルにして端折っているのかなと解釈しています。あくまでエピローグまでの犯行の謎解きがメインであり、探偵役の翔太郎やその他の人物が何者なのかや空間がどうなっているかは書いてある通りに受け取るだけでよく、厳密に想像することはあまり重要ではないと思われます。

それにしても麻衣の狂気は唐突感が否めません。そして瞬時に計画を考え抜く思考力も非現実的なほどです。もともと狂気的な内面を秘めており、この状況に至ったことにより覚醒したのかなと思うくらいで、これも深く考えても仕方ないのかもしれません。私としてはこの唐突に発生する狂気も、エピローグに全振りな印象を際立たせて爽快感を増す要素になっているように思いました。ただ、読む方によっては違和感として残ってしまうかもしれません。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/方舟

まとめ

以上、夕木春央さんの「方舟」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。