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さよならドビュッシー/中山七里 -感想- 美しく溶け合う音楽とミステリー

読書感想です。今回は中山七里さんの「さよならドビュッシー」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:さよならドビュッシー
  • 作者 :中山七里
  • 出版社:宝島社(宝島社文庫)
  • 頁数 :415P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • クラシック音楽が好き、関心がある
  • ミステリー小説が好き
  • スポ根(成長物語)が好き
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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5
読み応え
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過激表現
1
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あらすじ

『ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な彼女の人生は、ある日突然終わりを迎える。祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、ただ一人生き残ったものの、全身火傷の大怪我を負ってしまったのだ。それでも彼女は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する――。』

引用元:宝島CHANNEL

感想

音楽とミステリーと青春
音楽とミステリーが巧妙に織り交ぜられている点が本作の大きな魅力の一つです。音楽に関しては主要人物である女子高生の成長過程も描かれ、青春を感じる、熱い気持ちになるような展開もあります(私は『のだめカンタービレ』をイメージしました)。これらのどれかの要素が弱いということがなくしっかり両立しており充実感がものすごく大きい作品です。

文字で音楽を感じる
音楽に関する細かな描写や解説が散りばめられており、それが物語とも絡み合い深みを与えているように思います。クラシック音楽が扱われ演奏シーンもいくつか描かれますが、登場する曲を知っていれば聞こえるようで、知らない楽曲でもその文字からその曲を感じるような繊細な描写が印象的でした。

しっかりとミステリー
音楽を軸とした物語の中に自然と入り込む違和感、複雑な謎解き要素が含まれており、飽きさせません。事件の真相が明らかになる過程で、登場人物たちの人間関係や過去が次第に浮き彫りにされていき、徐々に可能性が狭まっていく。そのドキドキも魅力的です。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

音楽要素について
私はピアノを少し触れていたりクラシック音楽にも関心があるので、作中に出てくる楽曲やピアノの技術に関する解説はとても興味を引かれ楽しく読むことができました。直接的な技術というより楽曲に向き合う姿勢やピアノを弾く際の考え方の解説が多かったので、直接触れたことがなくてもイメージができるようになっていたように思います。

コンクールなどの演奏場面も迫力があり、文字を追うことでその演奏を聴いているような感覚になります。特に物語最後、本選の演奏は身体の不安を抱えつつもそこまでの過程の集大成を演じるという熱量を感じ、ハラハラドキドキと爽快感がたまりませんでした。

読後には実際の音を聴いてみたいなという気持ちも湧き、作中に登場したいくつかの楽曲を聞いてみてその場面を思い浮かべてみたりしました。楽曲を知りながら読むとまた感じ方が異なるかもしれません。

作中に登場した主な楽曲
・英雄ポロネーズ (ショパン)
・練習曲アラベスク (ブルグミュラー)
・超絶技巧練習曲第4番マゼッパ (リスト)
・熊蜂の飛行 (リムスキー・コルサコフ)
・エチュード十の二 十の四 (ショパン)
・月の光 (ドビュッシー)
・アラベスク第1番 (ドビュッシー)

ミステリー要素について
ルシアという名前も個性的で特徴的なキャラクターが序盤で消えたことには違和感を感じていました。とはいえ火事での生き残りは一人ということに疑いの余地はなく、遥が生き残ったとされて話の流れとしてもそこには違和感を持てずそういうものかと流してしまいました。なので真相を知った際は驚愕でした。よく考えれば火事で見分けも難しい状態になっていたことなどの伏線は散りばめられており、驚きを最大に感じられて我ながら良い読み方をしたなと思う気持ちと気付けず悔しい気持ちが混じっています。

病院での人を取り違えってあり得るの?とか、大火傷からあんな短期間で戻っていくの?とか、敵対する3人娘が性悪すぎない?など細かく見ると気になる点はあるものの、楽しむために受け入れるべき物語設定として私はあまり深く考えなかったことも楽しめた要因かなと思います。一方で粗が気になるような方は気になる部分が少なくなかったのではとは思います。

主な伏線
・香月遥は酢豚が好き。なのに「苦手な豚肉料理~」という場面がある。
・鏡の中で小首を右に傾げる。
・母親が抱きしめた時の違和感。
『そう言ってあたしをきつく抱き締めた。~ 一瞬不安げな目をこちらに向けた。』
・”アベック”という死語を使う。
・服の交換

3行でネタバレ(※以下開く際は要注意)

続きを読む ※ネタバレ注意
ピアニストを目指す女子高生”遥”と”ルシア”、資産家の祖父が火事に遭い”遥”一人だけ生き残る。”遥”の母親が何者かの手により階段から転落死。
警察とピアノ教師”岬洋介”による事件の捜査。治療とレッスンに励む”遥”。”遥”は学校を代表してコンクールに出場し優勝。
生き残ったのは”遥”ではなく”ルシア”であり、”ルシア”は”遥”になりすましていた。”遥”の母親に気付かれ揉み合いの結果発生した事件であった。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/さよならドビュッシー

まとめ

以上、中山七里さんの「さよならドビュッシー」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。