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黒猫の三角/森博嗣 -感想- Vシリーズ第1弾。個性的な登場人物たちとの出会い。そして密室殺人。

読書感想です。今回は森博嗣さんの「黒猫の三角」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:黒猫の三角
  • 作者 :森博嗣
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :472P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ミステリー小説が好き
  • 哲学的な思考をすることが好き
  • 有名シリーズ作品を読み始めたい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『1年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、6月6日、44歳になる小田原静江に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静江は殺されてしまう。
森博嗣の新境地を拓くVシリーズ第1作、待望の文庫化。』

引用元:講談社BOOK倶楽部

感想

Vシリーズ第一弾
この小説は、Vシリーズの第一作目であり、「S&Mシリーズ」でも馴染み深い雰囲気を持っています。森博嗣さんの作風に初めて触れる方にとっても、彼の複雑で知的な世界観を堪能する入り口として最適な一冊だと思います。シリーズ第一作目ということで、はじめましての登場人物たちの関係性を知っていくことも楽しみなポイントの一つです。

個性的な登場人物たち
まず印象的だったのは登場人物たちの”濃さ”です。私は「S&Mシリーズ」から続けて読んでいるのでどうしても比べてしまいますが、「S&Mシリーズ」は犀川先生も萌絵も個性的ではありましたが落ち着いた色味の個性という印象で、今作の登場人物たちはそれぞれ華やかな色味を感じます。

これは登場人物たちの名前にも引っ張られている部分はあるかもしれません。名前がまた個性的で、読み進める中ではじめのうちは「何て読むんだっけ」となりがちでした。

数学的思考や哲学的問い
「S&Mシリーズ」から続けて読んでいる方は馴染んでいると思いますが、一般的なミステリー小説に見られる論理的な展開だけでなく、数学的思考や哲学的問いかけが散りばめられており、ミステリーという枠を超えて深い考察を促されます。単に「誰が犯人か」という問題以上に、世界の見方そのものを揺さぶられる体験をします。

それだけ聞くと重たい印象を持たれるかもしれませんが、そうはならないユーモアが含まれることも魅力の一つです。登場人物たちが軽快に繰り広げるユーモアと鋭い観察力に裏打ちされた会話が、ミステリーの緊迫感を緩和しつつも、物語のテンポを心地よく引き締めます。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

第一作目ならではのトリック
登場人物たちの素性を知らない第一作目だからこそという構成でした。ミステリーとして犯人は誰かという点についてはわりとわかりやすく、終始怪しい人物ではあったように思います。どのようにというのも犯人が分かればシンプルなものでした。

瀬在丸紅子と犯人との対峙の場面はとてもスリリングで、読み進める手に力が入りました。「S&Mシリーズ」でも毎度ありましたが、結末に向かって引き締まっていくこの感覚がたまりません。

今作で語るべきはやはり”動機”です。理由がないことの美しさ。与えられる指令。言葉の宿命。

『殺してみようかな、とふと思ったんですよ。それだけです。とても小さな発想です。一度でも、寝てしまえば、食事をしてしまえば、あるいは誰かと話しただけで、おそらく消えてしまうような、そんな小さなインスピレーションだった。人間的な、高尚な、本もののインスピレーションだった。金や快楽みたいな、何かを得たいとか、恐怖や絶望みたいな何かから逃れたいとか、そういった獲得でも逃避でもない、あるいは、肉体的な欲求ですらなかった、といって良い。そう、理由なんてありません。動機なんてないんです。だからこそ人間だ。僕は人間だ。違いますか?こんなことができる、それが、人間の証ではありませんか?』

『その、人間の証に、何の価値がありますか?』

言っていることに納得してしまう部分もあるところがこわいですね。倫理とか道徳とかって何なんだっけとわからなくなってしまいます。だめなものはだめ、と結論は変わらないものの、なんでだめなのか、その結論に至る道筋として本質的な視点に触れたような気がします。「S&Mシリーズ」から続けて読んでいると、なんとなくこの独特な思想も頭に馴染みやすくなってきた感覚があります。

文庫版の解説でも触れられていましたが、例えば小田原姉弟に何があったのかなど未回収な部分があったり、細かな要素も散りばめられているようです。今後に繋がることなのか、見落としているのか。そういったことを自分の見える範囲で拾いながら楽しむのもシリーズものの楽しみの一つです。

天才の存在
「S&Mシリーズ」で真賀田四季に感じたものに近しい印象を瀬在丸紅子には持ちました。そのミステリアスな魅力と超人的な推理力で物語を彩り、彼女の意図や行動の背景には多くの謎が残ります。彼女の存在が、物語の緊張感を高め、単純な事件解決から一歩進んだ、哲学的なテーマを持つミステリーへと昇華させているように感じました。

Vシリーズは瀬在丸紅子のイニシャル、Vに由来するということで、彼女を中心に進んでいくと思うとシリーズのこの先も楽しみで仕方ありません。

登場人物たちに愛着を感じ、先が楽しみになった
小鳥遊練無、香具山紫子もそれぞれが異なる方向で突き出た個性を持っており、それが全体の雰囲気を彩るような魅力的なキャラクターでした。私としては紫子が印象的で、関西弁で繰り広げるユーモアのある掛け合いが全体へ柔らかな雰囲気を与えていて、心地よく読み進められる助けになっていたように思います。

最後には彼らが先の物語にも関わってくるというような描写もあり、次への期待が高まりました。保呂草潤平の本体については今後どう絡んでくるのか気になるところです。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/黒猫の三角

まとめ

以上、森博嗣さんの「黒猫の三角」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。