読書感想です。今回は村田沙耶香さんの「コンビニ人間」です。
第155回芥川賞を受賞した作品で、累計170万部突破&40カ国語に翻訳されるなど、大きな話題になった作品です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。
作品情報
- 作品名:コンビニ人間
- 作者 :村田沙耶香
- 出版社:文藝春秋(文春文庫)
- 頁数 :176P
こんな人におすすめ
- 社会の「普通」に違和感を感じる
- 生きづらさを感じる
- シンプルで読みやすい文学作品を探している人
特徴グラフ
※私個人の見方・感想です。
あらすじ
『「普通」とは何か?
現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作
36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。
日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、
「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。
「いらっしゃいませー!!」
お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。
ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、
そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。
累計170万部突破&40カ国語に翻訳(2024年5月現在)。
米国〈ニューヨーカー〉誌のベストブック2018に選ばれるなど、
世界各国で読まれている話題作。』
引用元:文藝春秋
感想
普通とは何か
第155回芥川賞を受賞した作品で、現代社会における「普通」とは何かを問いかける物語です。
主人公の古倉恵子は、36歳の独身女性で、大学時代から18年間、同じコンビニでアルバイトを続けています。
幼少期から周囲と異なる感性を持ち、「普通」の感覚が理解できない彼女にとって、マニュアルが整備されたコンビニは、自分を「正常」に保てる唯一の場所です。
物語は、恵子の視点から描かれ、どのように社会に適応しようとしてきたかが描かれます。
彼女は周囲の人々の言動を観察し、それを模倣することで「普通」を装います。
しかし、時が経つにつれ、仕事や結婚など社会的な期待が彼女に降り注ぎます。
現代社会の矛盾
社会が定義する「普通」とは何なのか、そしてそれに適応しようとすることの意味について考えさせられました。
周囲は恵子に「普通」であることを求め続けます。
現代社会において、多様性が尊重されるべきと言われている一方で、「普通」という枠組みに囚われている現実を映し出しているように思います。
異常とされる主人公に共感してしまう
恵子の視点から描かれる世界は、独特でありながらも、どこか共感できる部分があります。
彼女の視点はある意味合理的で、彼女が周囲から求められる「普通」は本当に「普通」なのか?と疑問に思えてしまいます。
彼女の「普通」を理解しようとする姿勢や、自分の居場所を見つけるための努力は、極端なものではあるものの、その一部は私自身も抱える不安と重なる部分があるように思いました。
恵子の生き方を通じて、自分自身の「普通」や社会の価値観について、改めて見つめ直してみたくなりました。
さらっと読みやすい
ページ数は多くなく、平易な文章で作られています。
またシンプルな構成で、起きていることや関係性がわかりやすく、短時間でさらっと読むことが出来ます。
しかし内容は深く考えさせられるものです。充実度がとても大きい作品です。
また、巻末の中村文則さんの解説がとても良くて、この作品を噛み砕いて解釈することの助けになります。
細かな視点にも気付かせてくれて、この作品の魅力を引き出してくれていました。
他の読者の感想
こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。
まとめ
以上、村田沙耶香さんの「コンビニ人間」の読書感想でした。
この作品は、「普通」であることの意味や、個人の生き方を考えさせられる作品です。生き方に悩む人や、社会の価値観に違和感を覚える人にとって、共感したり、新しい視点を得たりするきっかけになるかもしれません。
未読の方は是非手に取ってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。