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自由研究には向かない殺人/ホリー・ジャクソン <あらすじ・感想・考察>高校生が卒業研究で町の事件の真相を追う。

読書感想です。今回はホリー・ジャクソンさんの「自由研究には向かない殺人」です。

記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:自由研究には向かない殺人
  • 作者 :ホリー・ジャクソン
  • 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
  • 頁数 :582P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • ミステリー小説が好き
  • テンポの良い物語が好き
  • スリルを楽しみたいけど、心温まる部分も欲しい

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『高校生のピップは自由研究で、自分の住む町で起きた17歳の少女の失踪事件を調べている。交際相手の少年が彼女を殺して、自殺したとされていた。その少年と親しかったピップは、彼が犯人だとは信じられず、無実を証明するために、自由研究を口実に関係者にインタビューする。だが、身近な人物が容疑者に浮かんできて……。ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、傑作謎解きミステリ!

引用元:東京創元社

感想

自由研究のテーマは失踪事件の調査

物語は、高校生のピップが卒業プロジェクトで5年前の失踪事件を調査するところから始まります。

この事件はすでに解決したとされていましたが、彼女は「本当にこれで終わり?」と疑問を持ち、ゼロから真実を探し出そうとします。

自由研究らしい調査過程

本作の大きな魅力の一つは、調査の過程がジャーナリスティックに描かれていることです。

ピップが作成したノートやインタビューの記録が多く登場します。

進んでいくテンポも良く、自分も彼女と一緒に事件を追いかけているかのような没入感を得られます。

物語に臨場感を与えると同時に、読者の推理力を試す仕掛けにもなっていると感じました。

ひたむきな主人公

本作のもう一つの魅力は主人公のピップにあります。

ピップは周囲の反対や危険に直面しながらも、「真実を明らかにしたい」という思いで突き進みました。

その姿は清々しく、また彼女の細やかな観察力や、時に危険をものともしない行動力にはドキドキします。

さらに、物語を通じて、人との絆や信じることの大切さが丁寧に描かれていることも印象的です。

特に、ピップと事件に関わる友人との友情や協力が、緊張感のある展開の中に温かみを加えてくれます。

彼女の冒険に夢中になる

この物語は単なる謎解きにとどまらず、偏見や階級格差といった社会問題にも触れています。

事件に関わる登場人物たちの背景や行動から、先入観がいかに物事の判断を歪めるかが示されており、それが物語の深みを増しています。

スリルのある謎解きと社会問題、ユーモアのあるやり取り、心温まる成長ストーリーが絶妙にミックスされた作品です。

最後まで予想を裏切る展開が待っています。

ミステリーとしての展開にハラハラしつつも、ピップの成長や人間関係の描写にほっこりさせられる、良い読書体験でした。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

ここで一呼吸…
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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

調査過程が楽しい

高校生が自由研究として事件を調査するという進め方が新鮮で、読んでいてとても楽しかったです。

手当たり次第インタビューをするとか、SNSを駆使するといった、イメージしやすい手法に親近感が湧きます。

その手法でどんどん新たな手掛かりが見つかっていくのが読んでいる私も気持ち良くなってきます。

進むにつれて怪しい人物が増え不穏さが増していきぞくぞくしました。

 
こよい
登場人物全員が怪しい…町全体が何かを隠しているのかも、とも思っていました。

暗い展開なのにそう思わせない

真相に近付くにつれて町の闇が見えてきます。薬が横行していたり、おかしなパーティーが開かれていたり、かなりヘビーな世界です。

ただ、ピップのキャラクターによって物語の印象が暗くなりすぎないのは絶妙なバランスだなと思いました。

ピップのジョークか私はたまらなく好きで、周囲の人たちとのやり取りを楽しみにしながら読んでいました。

事件を簡単にまとめて解説

結論から遡っていこうと思います。

未解決事項があることは、物語をより多層的にし、続編や読者の考察を誘う役割を果たしているように思います。

■発端の事件
アンディ失踪、サル・シンが森で死亡
→サル・シンがアンディを殺害し、その後自殺したものと思われていた。

■真相①
学校の教師エリオットがアンディを殺害。その後、罪をなすりつけるためにサル・シンを殺害。

・判明の経緯
娘ナオミが携帯の修理中に使った代替携帯に差されたSIMがアンディとのやり取りに使っていたものだった。

ワード家のプリンターから脅迫状が印刷されていたことがわかりエリオットが犯人の有力候補に浮上。

・事件の背景
エリオットは教え子のアンディから迫られ関係を持つ(アンディはサルと同じ大学に行きたかったため先生を利用しようとした)。

その後アンディと揉め事になり、ある日の揉み合いの結果、アンディに致命的な外傷を与えてしまう。その後アンディは行方不明に。

エリオットの娘ナオミの日記を覗き見た際にマックスたちの轢き逃げ事件を知り、彼らを使ってサルのアリバイを消させる。

自分を慕うサルをおびき寄せて自殺に見せかけるように睡眠薬を用いて殺害。

エリオットはアンディが死んだと思っておらず、アンディに似た他人を偶然発見してしまい、その他人を旧家に監禁していた。

ピップがこの事件を調査していると知り、脅迫状を何度か届ける。

■真相②
アンディの妹ベッカがアンディの死体を遺棄。

・判明の経緯
バーニーの死にエリオットが関わっていないと判明。

時系列的に最後に生きているアンディを見たのはベッカであることに間違いはなく、エリオットとの揉め事の後にベッカとアンディが会っているはずである。

アンディを殺した人物が別にいると思っていたピップは、ベッカが有力候補であるとして直撃インタビュー。

・事件の背景
アンディはエリオットと揉み合いになって頭を打ったあとに自宅へ帰り、ベッカの目の前で死亡していた。

ベッカはアンディの死の直前にアンディと喧嘩をしており、自分が突き飛ばした結果アンディが死んだと思っていた(実際はエリオットが揉み合いで頭を打ったことが死因の大半と思われる)。

アンディの死体を汚水処理場に捨てた。

■補足
・ピップのもとに届いた脅迫状は単一人物からのものではなく、エリオットからのものと、ベッカからのものがあった。

・マックスはアンディから睡眠薬を買っていた。その睡眠薬を用いてベッカを強姦。そのことをベッカがアンディに相談したのがアンディの死の直前の出来事。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/自由研究には向かない殺人

まとめ

以上、ホリー・ジャクソンさんの「自由研究には向かない殺人」の読書感想でした。

ミステリーとしての完成度が高いだけでなく、若い主人公が自らの信念を貫き、困難に立ち向かう姿は、勇気を与えてくれます。心に残る一冊でした。

未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。