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島はぼくらと/辻村深月 -感想- 自然な青春。島で暮らす4人の高校生と「幻の脚本」の謎。

読書感想です。今回は辻村深月さんの「島はぼくらと」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:島はぼくらと
  • 作者 :辻村深月
  • 出版社:講談社(講談社文庫)
  • 頁数 :432P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 青春を感じられる小説が読みたい
  • 穏やかな気持ちになれる小説が読みたい
  • 辻村ワールドを楽しみたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
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読み応え
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過激表現
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あらすじ

『瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花、源樹、新の四人は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。』

引用元:講談社

感想

青春
冴島という島に住み本土の高校に通う4人の同級生たちを中心とした物語です。爽やかで甘酸っぱい青春という感じではなく、かなり自然な関係性に見えたことが印象的です。とはいえ島でたった4人の同級生として過ごしてきた彼らの特別な絆がいくつも垣間見えます。このような仲間がいることを羨ましく思えるような爽やかな雰囲気です。

細かく描かれる島の暮らし
そんな彼らを中心に、島での暮らしが細かく描かれています。本土へのフェリーでの通学、漁業などの島における活動、Iターン、島の政治などいろいろな場面が細かく描かれていて、島での暮らしを体験しているような感覚になります。そういった島ならではの場面における人間模様が物語の中心となっています。揉め事みたいなこともありはしますが、絶対の悪みたいなものは登場せず、島ならではの穏やかな雰囲気を人間模様からも感じられます。

良くも悪くも穏やか
物語の筋としてちょっとした謎解きみたいなものが含まれています。それが明らかになっていく終盤の盛り上がりはあります。ただ全体の印象としては勢いがあるという感じではなく、島の暮らしや人間模様を体感するという穏やかな雰囲気です。少なくともミステリーのような劇的な結末を期待して読むものではありません。

辻村ワールドの繋がり
辻村深月さんの小説は他の小説と繋がりを持っていることがあるのが特徴的ですが、本作にも他の作品との繋がりがあります。もちろん読んでいなくても十分に楽しめますが、「スロウハイツの神様」を読んでいるとおおっと思う場面があり楽しめる部分が増えるかと思います。また、「傲慢と善良」にも繋がりがありますので、気になる方は是非読んでみてください。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

4人の関係性が絶妙
くっついたり離れたりするでもなく絶妙な距離感で、かつ奥には特別な絆があるという感じの4人の関係性がとても好きでした。4人それぞれが抱えていることがあり、それを多くは語らずとも理解し合っている感じが素敵です。こういう自然に感じられる青春の描き方も良いですね。朱里と源樹、衣花と新、とくっつくとしたらうまいことくっつきそうなのも変にモヤっとさせずよかったです。その後は衣花のことが少し描かれただけでしたが、4人の特別な関係性は不滅だろうと思える爽やかな読後感でした。

幻の脚本
序盤に「幻の脚本」と惹き付けられる要素が現れたものの、霧崎は早々に退場して、それから「幻の脚本」について終盤まであまり触れられませんでした。中盤の蕗子さんの話や「さえじま」テレビ出演の話も面白く読めていましたが、「幻の脚本」ってどうなった?というのがちらついて少し気になりながら読み進めていました。「幻の脚本」にまた注目が戻り、修学旅行時のちょっとした冒険など真相が明らかになっていくまでの過程は終盤の盛り上がりという感じでとても面白かったです。「幻の脚本」が何かということは劇的という感じではないものの、そこから見えた朱里の祖母と碧子さんたちの関係性などの人間模様にはグッときました。

島の暮らし
印象的だったのは「さえじま」テレビ出演での揉め事の件です。あの一件だけ見ると村長がダメな印象が強いですが、島での暮らしが長い人ほどあまり村長のことを悪く言わないというのが見えます。火山の噴火という島が抱える重大な要素や過去の出来事も明らかになり、そこから今の島の現状に至っていると知ると、そのような島の人間関係にも納得できます。そのように全体を通して細かい描写の積み重ねで島全体の解像度がどんどん上がっていき、冴島での暮らしを体験しているように感じられました。

辻村ワールド
「スロウハイツの神様」に登場した赤羽環が登場しました。チヨダコーキを思わせる台詞などもあり気持ちが高まりました。谷川ヨシノも「傲慢と善良」などに登場しています。私は「傲慢と善良」を先に読んでいましたが、逆だったら「傲慢と善良」の方の印象が変わっただろうなと思いました。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/島はぼくらと

まとめ

以上、辻村深月さんの「島はぼくらと」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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