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傲慢と善良/辻村深月 -感想- 人間の「傲慢」と「善良」を知る。「大恋愛」小説。

読書感想です。今回は辻村深月さんの「傲慢と善良」です。
記事前半はネタバレは含みません。「続きを読む」を押さない限りネタバレ内容は見えませんので未読の方も安心してお読みください。

作品情報

  • 作品名:傲慢と善良
  • 作者 :辻村深月
  • 出版社:朝日新聞出版(朝日文庫)
  • 頁数 :504P

こんな人におすすめ

 
こよい
  • 考えさせられるような恋愛小説が読みたい
  • ミステリーが合わさったような恋愛小説が読みたい
  • 映画化される人気小説を読みたい
 

特徴グラフ

※私個人の見方・感想です。

話の明るさ
1
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4
5
読み応え
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5
過激表現
1
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3
4
5

あらすじ

『婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。生きていく痛みと苦しさ。その先にあるはずの幸せ──。2018年本屋大賞『かがみの孤城』の著者が贈る、圧倒的な“恋愛”小説。』

引用元:朝日新聞出版

感想

消えた婚約者を追う
あらすじにあるように、突如消えた婚約者を追うことが軸となる物語です。当然の流れとして行方や消えた理由を追うことになりますが、その過程で少しずつある違和感を感じることとなります。先が気になる物語構成ですね。ただし、この小説の最も大きな魅力はその真相へ向かう過程で見えてくることにあります。

見えてくること
それこそが「傲慢と善良」です。読む前にこのタイトルに思ったこととして、「傲慢」はなんとなく痛いところを突いてきそうな予感がしますが、そこに並ぶ「善良」とはなんだろう?と想像がつきませんでした。「傲慢」はともかく「善良」であるに越したことはなくそこにそれ以上のことはないような気がしていました。タイトルに表れるほどの意味とはなんなのか、それがどのように物語に関係するのか。この「傲慢と善良」こそ、多くの読者が「刺さった」と感じた部分だと思います。

容赦なく
そのような特徴を持つことから人の内面が丁寧に描かれていきます。残酷なほど容赦なく切り込んでいくように感じる部分も多く、読んでいる自分にも「傲慢と善良」を突きつけられているような感覚になります。

恋愛小説として読むべきなのか
恋愛小説であることは確かだと思いますが、私としてはその思考に向き合う読み方をおすすめします。恋愛小説としてただ登場人物たちに起きた出来事に注目して読むのではもったいない、読者自身が受け取れることが多く含まれている小説だと感じています。

ちなみにタイトルは『高慢と偏見』という恋愛小説から想を得たそうです。

以下、内容に触れた感想を記載しますので、開く際はその点ご了承ください。

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感想(ネタバレ有り)

続きを読む ※ネタバレ注意

恋愛小説としての違和感
真美の行方を追うわけですが、警察が捜索をやめるくらいまではいいものの、その後の独自の捜索では悠長に思う場面が多かったです。

結婚相談所での小野里さんとの話の場面で、あぁこの小説はそういう読み方じゃないんだと感じ、そこからは出来事の行方よりも語られる思考に重きを置いて読むことにしました。恋愛話として読むとちょっと違和感がある進み方ではありました。

傲慢について
様々な形の「傲慢」がありましたね。身に覚えのあることが「傲慢」だと指摘されたような気持ちになりましたが、でもそれって自然な思考じゃないかなと思っている自分もいて、そのこともまた「傲慢」なんだろうかと何重にも自分を問わされました。結局架も真美もそうであったように「傲慢」であることは避けられなくて、それを自覚した上で自分と相手に向き合うことが必要なのかもしれません。

善良について
なんとなく自分には関係がないことで、真剣に見つめたことが無かったような部分に着目していて新鮮でした。善良であることが婚活というシーンでは不利になる、善良であることが歪んで見える、善良と傲慢の共存。話が進むにつれて真美の見え方が変わっていくことになんだか「怖い」と感じます。自分の記憶にあることも、見方を変えるとひっくり返って見えるかもしれないと不安がちらつくような気になります。

結末について
こんな風に自分や相手に真剣に向き合うその時間は苦しくてもその分2人の間に生まれるものもあり、なんだか羨ましいなとも思いました。架と真美のことを大恋愛だと表した台詞はまさに私が思ったところで、これを経てなお2人でいられるならその関係は間違いないと思えるような気がします。

そういう意味では結末には私はホッとしました。都合良く見えるような気もしなくはないし、共感できないという人もいるかもなという気もします。ただ選んだ結果に対して周りがどう思うかは関係がなく、そこまでの過程を経て2人がそれを選択したということだけに意味があるのだと私は思います。それを表すような結末だったので私としてはとてもしっくりきました。

その他
印象的だった台詞を引用します。

『自分の孤独と不安を直視できない』
『あなたがそうしたい、と強く思わないのだったら、人生はあなたの好きなことだけでいいの。興味が持てないことは恥ではないから。』

おまけ
朝井リョウさんの解説が素晴らしかったです。物語の解像度を高めるのにこれ以上ない解説でした。もし読み飛ばした方がいたら、次に読むときは是非解説も合わせて読んでみてください。

他の読者の感想

こちらをご覧ください。
※ネタバレ感想も含まれますので見る際はご注意ください。

読書メーター/傲慢と善良

まとめ

以上、辻村深月さんの「傲慢と善良」の読書感想でした。
未読の方は是非手に取ってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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